死ぬ直前にも「ホンネ」と「タテマエ」

徳川家康のホンネとタテマエが、見事に違ったのは、やはり死ぬときだ。死ぬ直前、家康は諸大名には、

「天下は天下のものだ。息子の秀忠にもしおかしな政策があったら、すぐにこれを殺し、おまえたちのだれでもいいから天下をとれ」

童門冬二『徳川家康の人間関係学』(プレジデント社)
童門冬二『徳川家康の人間関係学』(プレジデント社)

と公言した。タテマエである。

ところが秀忠には、

「大名は誰ひとり信用できぬ。もし、反心を抱くような者がいたら、たとえ身内でもすぐに殺せ」

と告げている。これがホンネである。

自己の張ったネットワーク員たちが日夜、緊張していたのと同じように、家康自身もまた、気をゆるめることは寸時もなかったのだ。情報を利用するものの宿命であろう。