織田信長・豊臣秀吉・徳川家康……。ホトトギスの川柳に代表されるように、戦国三英傑の性格や人柄についてはさまざまな言い伝えが存在する。しかし、歴史小説家の童門冬二さんは「イメージを覆すようなエピソードがある」という。普段はあまり語られない、天下人の意外な一面とは? 戦国三英傑の知られざる横顔に迫る――。

※本稿は、童門冬二『徳川家康の人間関係学』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

狩野探幽筆「徳川家康像」
狩野探幽筆「徳川家康像」(写真=大阪城天守閣所蔵/PD-Japan/Wikimedia Commons

リーダーとしての三人の差はどこにあるのか

信長・秀吉・家康の三人の性格をいい伝えた言葉に、有名な「鳴かないホトトギス」に対する川柳がある。

信長:鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス
秀吉:鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス
家康:鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス

これは、天下人としての、歴史に対する役割分担を表しているものだという説もあるし、また、いや、三人の性格をいい表したものだという説もある。性格説に従えば、信長は短気であり、秀吉は自信家であり、家康は忍耐家であるということになる。一般に、この性格説が行き渡っているので、リーダーにたとえると、次のようになるといわれている。

信長:決断力に富み、あまり部下の意見を聞かない。時に、冷酷・残忍であり、非情なダンプカー的リーダーだ。
秀吉:手柄を立てた者には、金や褒美を惜しまないので、下の者の受けがいい。いってみれば、巧妙なオダテ型リーダーである。
家康:子どもの頃から苦労しているので、部下思いだ。我慢強く慎重で、多少複雑なところがあるが、家臣団の結束力は、信長や秀吉のそれに比べると最も強い。

三人は本当にこういう言い伝えどおりの人間だったのだろうか。

それを覆す、あれっ、と思うようなエピソードがある。そのいくつかを拾ってみる。