状況を一変させたマーケティングのDX化

数あるマーケティングの施策において、技術革新によりもっとも大きな変化があった分野の一つが、広告でしょう。

過去を振り返れば、広告に対する費用対効果というのは、ずっとあいまいなままでした。

百貨店王と呼ばれたアメリカの経営者、ジョン・ワナメーカーは、広告について次のような言葉を残しています。

「私が広告に使っているカネの半分は無駄とわかっている。問題は、どちらの半分が無駄かわからないことだ」

新聞やテレビといったマス広告が主流であった時代、広告の効果測定は難しく、ワナメーカーのようにどれくらいの費用対効果があるのか見えぬままに広告を出し続けていた経営者はたくさんいたはずです。

しかし、テクノロジーの進化によって、広告の在り方が根底から変わりつつあります。

いまや、消費者の行動データはクラウド化によって限りなくリアルタイムで把握することができます。さらには、モバイルデバイスの普及により、ハードウェア側からも行動データを集めることが可能です。

これまで技術的に不可能だったり、コストがかかりすぎたりして出来なかったことでも、技術やサービスをうまく組み合わせることによって、リアルタイムに精度の高い分析ができるようになりました。

これによりマーケティングの精度が大きく上がったのは間違いありません。

以前は勘や経験に頼らざるを得なかった広告の出稿を、データを根拠として理論的に選択できるようになったのです。

問われているのは「緩慢な死か、改革か」

製造や流通といった、広告以外の領域でも、同様のことが起きており、適切なデータを集め、分析できればコストの最適化が図れ、それが最終利益に直結するような時代になっています。

櫻庭誠司『未来をつくるグロースマーケティング』(クロスメディア・パブリッシング)
櫻庭誠司『未来をつくるグロースマーケティング』(クロスメディア・パブリッシング)

現代において、過去のマーケティングの常識は、今やまるまる書き換わっているといっていいでしょう。そんな中、いつまでも従来の勘や経験に頼った手法に固執していると、企業としての競争力は失われ、衰退するのは確実です。

過去の成功体験を胸に抱き、緩慢に死んでいくか。それとも未来を見据えて、バリューチェーン全体の改革に着手するか。

マーケティングの進化は、経営者にこうした厳しい問いを投げかけるものであると、私は考えています。

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