失敗の理由③ 中小企業に多い「人の問題」 

全体最適が進まない背景には、各部署の連動不足に加え、人の問題が隠れていることも多いです。

先ほどの大企業の例でいうなら、現場で働く社員たちの視野が、自分の成績や部署への貢献といった部分最適にとどまっていると、各人がデータ連動の重要性に気づくことができず、「めんどうだから」「作業が増えることになるから」とデータ共有をせずに済ませてしまいがちです。

これを補うには、各人が入手したデータを基幹システムにこまめに入力するような仕組みの導入や風土の醸成が必要になるでしょう。実は、このような人の問題もまた、モノを売るための仕組みづくり、すなわちマーケティングの範疇にあるものといえます。

中小企業においては特に、人の問題がマーケティングを阻害しているケースが多いと感じます。

さまざまな情報を示すインフォグラフィックスと働く人々の手元
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「今のままでいい」と変化を嫌う人の弊害

まず経営者自身が、ここまで述べてきたようなマーケティングに対する誤解を抱いているようだと、当然ながらマーケティングは一向に進みません。「集客だけしてくれればいい」「今の仕組みの中でやってほしい」といった要望をよく受けますが、そうした部分最適、部分的改善の発想では、マーケティングで成果を挙げるのは難しいといえます。

また、過去の成功体験が壁となることもよくあります。「これまでうまくいっていた」「今のままで困らない」というような理由で、経営者がIT化やシステム化、新たな仕組みの導入に消極的であると、現代マーケティングの要ともいえるデータが効率的に集まらず、マーケティングに支障が出てしまいます。

組織においても、同様のことがいえます。どんな会社でも、変化を嫌う人というのは一定数存在しているものであり、新たなシステムを導入したり、時代に合った仕組みを作ったりする場合には、必ず反対するものです。そうした反対勢力が幅を利かせていると、効果的なマーケティングを行っていくための環境がなかなか整いません。