業者側からしても、自社が担うべき目標は全部クリアしたのに「それが最終的な成果につながらない、どうすればいいのか」といわれても、返答に困るでしょう。

このように、事業領域が限定的な会社にマーケティングを丸投げして、「これで成果があがる」と安心してしまうというのが、よくある失敗例です。結果として成果は部分最適にとどまり、前述のような「施策の成果は出ているのに、最終利益が増えない」という状況が生まれてしまうのです。

失敗の理由② データの連動不足

部分最適の罠は、組織内にも存在しています。

特に大企業においては、社内に広告部や営業部といった多くの専門部署が存在していますが、それゆえにマーケティング活動がぶつ切りになってしまいがちです。各部門がそれぞれ成果や目標を目指す、すなわち部分最適ばかりが重視され、ともすれば「営業部と制作部がライバル関係にある」というような競い合いが生まれます。こうした関係性の悪化は、各部門が部分最適の視点しか持てないからこそ出てくるものでしょう。

多くの企業がこうした状況に陥った結果、起きてくるのが組織内でのデータの連動不足です。企業内の各部署でデータの取り扱い方法が異なるなどした結果、本来であれば横断的に確認すべきデータや、全体最適を達成するために欠かせないはずのデータが、一つの部署だけで処理されてしまうのです。

営業部と生産部の「断絶」がロスを生む

本質を考えるなら、注文を獲得する営業とそれを作る生産など、あらゆる企業活動は連鎖する関係にあるはずで、それを表すのがバリューチェーンという概念です。ごく単純化して例を挙げると、営業部が受注状況を月一や週一の頻度でしか生産部に共有していないとするなら、生産部では当然、最適な生産量を判断するのが難しく、ロスが生まれやすくなってしまいます。

また、システム自体が独立しているという問題もあります。営業部と生産部でデータの引き渡しが行われる場合でも、営業支援と生産管理のシステムが違えば、営業部から届いたデータを生産部で一度、生産管理システムに入力しなおすという手間が出てきます。

このようなデータの連動不足がいくつも存在し、結果的にそれがロスを生んでいるケースは本当に多くあります。その結果、部署ごとの成果が最終利益に直接結びついていかないのです。