感染症と血液型には少しだけ関係がある

じつは血液型が、特定の感染症と関連しているという話もあります。医者である私にとって、血液型と感染症の関係は、血液型と性格との関係よりもずっと興味深いものです。

とくに胃腸管においての関連は以前より知られていて、たとえばO型の人はノロウイルスに感染しやすいという研究があります(※2)。ただ、その関連は強いものではなく、おおむね1.3倍程度です。O型でなくても感染するときはしますし、O型でも感染しないときはしません。

新型コロナウイルス感染症と血液型の関連も調べられています。A型は新型コロナの感染や重症化のリスクが高く、O型は保護的に働くとする研究が多いですが、関連は観察できないとする研究もあります(※3、4)。研究の結果が割れるのは、関連があったとしても、それほど強くないことを示しています。A型が新型コロナに感染しやすいとしても、2倍も3倍も感染しやすいということはありません。これくらいの小さな差は実地臨床には影響しません。A型だろうとO型だろうと重症化する可能性はあるのですから、同じように対応します。

※2 Infection, Genetics and Evolution. Volume 81, July 2020, 104245. “ABO blood group-associated susceptibility to norovirus infection: A systematic review and meta-analysis
※3 Blood Reviews. Volume 48, July 2021, 100785. “The impact of ABO blood group on COVID-19 infection risk and mortality: A systematic review and meta-analysis
※4 JAMA Netw Open. 2021;4(4):e217429. “Association of Sociodemographic Factors and Blood Group Type With Risk of COVID-19 in a US Population

医療、血液検査
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それぞれの血液型の「抗原」と「抗体」とは

では、どうして弱いながらも血液型と感染症に関連があるのでしょうか。いくつかの仮説を説明しますが、その前に血液について少し説明しましょう。

私たちの血液の約90%は水分で、ほかに赤血球、白血球、血小板といった血球成分、アルブミン、グロブリン、凝固因子といったタンパク質が含まれています。それぞれの血液型の赤血球を調べると、A型には「A抗原」、B型には「B抗原」、AB型には「AとBの両方の抗原」があり、O型にはどちらの抗原もありません。一方、血液を凝固させて血小板や凝固因子を除いた血清を調べると、A型にはB抗原に反応する「抗B」、B型にはA抗原に反応する「抗A」、O型には「抗Aと抗Bの両方」の抗体があり、AB型にはどちらの抗体もありません。

だから、A型の人にB型の血液を輸血すると、A型の人が持つ「抗B」抗体が、B型の赤血球の「B抗原」と反応して、赤血球が壊れるといった重大な副作用が起こります。だから、輸血は血液型を合わせて行います。

【図表1】血液型と抗原と抗体