日本では「A型は神経質」というふうに、血液型で性格を語られがちだ。内科医の名取宏さんは「昔、流行した『血液型人間学』という本が発端で確かな根拠はない。偏見や差別につながるし、嫌な思いをする人もいるだろうから気軽に話さないほうがいい。それに、自分の血液型を知っておく必要もない」という――。
血液サンプル
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「O型には大雑把な人が多い」のは本当か

ご存じのように、ABO式血液型では、血液はA型、B型、O型、AB型の4タイプに分けられます。以前、その血液型と性格は関係しているという説を、会話のきっかけにする人がたくさんいました。たとえば「A型は神経質で真面目な性格だ」「O型には大雑把おおざっぱな人が多い」「B型の人の性格はマイペース」「AB型は変わり者ばかり」などといった感じです。

こうした主張が日本で信じられていたのには、1970年台に『血液型人間学』と称する一般書がベストセラーになったという背景があります。たいていの人は誰でも大雑把な部分を持っていますから「O型のあなたは大雑把な性格ですね」などと言われると、血液型に関係なく当たったように感じるものです。血液型と性格の関連を正確に知りたいのであれば、こうした思い込みを排した科学的な研究が必要です。ところが、これまでの研究では血液型と性格の強い関連は示されていません(※1)。血液型人間学や血液型診断などは「科学」ではなく「占い」の類いです。

今では考えられないことですが、血液型人間学ブームのころには、血液型を教育や人事に活用する事例すらありました。仮に「O型には大雑把な人が多い」のが事実だとしても、目の前にいるO型の人が大雑把かどうかはわかりません。それなのに、O型だからと大雑把な人に向く仕事を割り振るのは、偏見に他なりません。血液型人間学が科学であろうとなかろうと、血液型によって扱いを変えるのは差別なのです。

※1 『パーソナリティー研究』2006 第15巻 第1号 p33–47「擬似性格理論としての血液型性格関連説の多様性

血液型で性格を決めつけるのは「ブラハラ」

私は、日常生活で血液型を話題にするのも避けたほうがいいと考えます。その場にいる全員が、血液型の話題で楽しめる保証はないからです。むしろ、「O型だから大雑把だよね」などと決めつけられることにウンザリしているけれど、その場の雰囲気を壊さないように空気を読んで、話を合わせている人が多いかもしれません。

これがたとえば、肌の色や出身地で性格を決めつけるような話題だったら、誰にでもいけないことだとわかるでしょう。血液型人間学や血液型性格診断も同じこと。「ブラッドタイプ・ハラスメント(ブラハラ)」という言葉もあるくらいです。

「今までは証明できなかっただけで、将来的に血液型と性格の関連が証明される可能性はゼロではない」という意見もあります。その意見は間違っていないのですが、「血液型人間学は科学ではなく占いの類いである」という結論には変わりありません。血液型と性格の関連は存在しないか、存在したとしてもきわめて弱いものです。人間関係に役立つほどの強い関連が存在するならば、とっくに実証されているからです。

「自己成就予言」といって、生物学的に血液型と性格の関連がなくても、「O型は大雑把な性格だ」という情報に触れ続け、そう信じる人が多い社会においては、血液型と性格に関連が観察されるかもしれません。そうした現象が存在するという報告もあれば、観察できなかったとする報告もあります。存在するという報告でも、何千人、何万人を対象としてやっと差が出るかどうかの小さい関連で、人間関係に役立つほどの強い関連ではありません。