ノンバイナリーに嫌悪感を示す人々も…

ノンバイナリーな子育てはまだ新しい育児法であり、反感を覚える人々も少なくない。

ガーディアン紙の取材に応じたカナダのある家庭は、2017年にカナダ政府から「M(男性)」「F(女性)」ではなく「U(おそらく未知を示すUnknownの頭文字)」が記入された健康保険証の発給を受けた。

おそらく世界で初めてノンバイナリーが公式に認められた身分証だとして、当時大々的に報じられている。だが、両親の元には温かい応援のメッセージに混じり、報道を見た心ない人々からの嫌がらせのメールが相次いだ。悪意あるメッセージがあまりに大量に届いたため、メールを振り分ける人物を雇わなければならないほどだったという。

反感の対象は子育て論に限らず、そもそもノンバイナリーという考え方自体に嫌悪感を示す人々もまだまだ少なくない。

12月には、バイデン政権の政府職員であり、ノンバイナリーを公言した最初の米政府職員とも言われるトム・コットン氏にまつわるスキャンダルがあった。空港で他人のスーツケースから貴重品を抜き取ったとされる。

性自認と犯罪行為は関係のない事象だが、米保守派のフォックス・ニュースは、ここぞとばかりにノンバイナリーをあげつらうバッシング記事を掲載している。

東京オリンピックで起きたノンバイナリー選手への共感

一方で世論は、おおむねノンバイナリーの人々をサポートする方向に動き出しているようだ。

2021年の東京オリンピックの際、スケートボードの米アラナ・スミス選手について英BBCの解説者が、繰り返し「she」と呼ぶ騒動があった。

選手本人は「they/them」の呼称を希望し、出場時に使用したスケートボードにもこの呼称の文字を刻んでPRしていた。さらにスミス選手は、ノンバイナリーを公言する初のオリンピック選手としても注目を集めていた。

だが、大会公式資料に「女性」と記載されていたことから、解説者は「彼女」と呼んでしまったようだ。故意の行動ではなかったが、本人の性自認を踏みにじる言葉を重ねたことで、視聴者からは反発が相次いだ。

英メトロ紙は、解説者が「繰り返しミスジェンダーした」ことで批判を浴びたと報じている。ノンバイナリーという立場を積極的に支持しようという機運が生まれているようだ。