イーロン・マスクは第1子に「X Æ A-Xii」と名付けた

欧米では、こうした考えをさらに発展させ、生まれてきた赤ちゃんや子供が男子でも女子でもないと考える子育て法が誕生した。いわば「ジェンダーニュートラルな育児」だ。

このような赤ちゃんは、ノンバイナリーの三人称である「they」と赤ちゃんを意味する「baby」を掛け合わせ、「theybie(ゼイビー)」と呼ばれる。

アメリカのみならず、イギリスでも市民権を得つつあるようだ。英ガーディアン紙は、「『ゼイビー』のコンセプトは2018年ごろから、主流になったとは言えないまでも、広く世間に認められてきた」と報じている。

2020年になると、イーロン・マスク氏が自身の子供をゼイビーとして育児する姿勢を見せ話題となった。米フォーブス誌は、マスク氏が第1子を「X Æ A-12」と名付けたと報じている。州法に適合するよう、のちにローマ数字を用いた「 X Æ A-Xii」に変更している。

2019年4月15日、SpaceXの「スターシップ」の将来の機能について説明している、イーロン・マスク氏
2019年4月15日、SpaceXの「スターシップ」の将来の機能について説明している、イーロン・マスク氏(写真=NORAD and USNORTHCOM Public Affairs/PD US Government/Wikimedia Commons

かなり変わった名前ではあるが、男女どちらの型にもはめないよう配慮し、性別を想起させない名前にしているようだ。同誌によるとミュージシャンで妻のグライムスさんは、以前配信した自身の動画のなかで、「私は(子供たちの)性別を決めつけたくはないです。彼ら自身がその人生のなかで(性別を)そう感じるとは限らないから」と説明している。

マスク夫妻の命名法はかなり極端であるにせよ、子供の性別を決めつけたくないため中性的な名前を選ぶという両親は増えているようだ。より一般的には、よく知られた名前のなかから中性的な響きを持つものを選ぶことが多い。育児事業などを展開する米Care.comは、Zaza(ザザ)やRenny(レニー)などの名前を挙げている。

欧米セレブが子供の性別を公表しない理由

アメリカでは一般に、赤ちゃんの性別への関心が非常に強い。出産に先駆けて、両親が生別診断の結果を披露する「性別お披露目パーティー」がごく一般的に行われている。

たとえば黒い風船を割り、中からピンクの紙吹雪が飛び出せば赤ちゃんは女の子、ブルーなら男の子などといった発表スタイルだ。友人などを招き、皆の前で性別を発表するイベントとして楽しまれている。

そんなカルチャーの根付くアメリカにおいてさえ、近年では子供に性別を意識させることに抵抗を覚える両親が増えてきているようだ。米カルチャー各誌は、ジェンダーニュートラルな育児をするセレブたちの例を多く取り上げている。

USウィークリー誌は12月、女優のシガニー・ウィーバーさんが自身の子がノンバイナリーであることを公表した、と報じた。