貯め期に家計支出を見直すメリット

子どもの教育費から解放されて、ついつい財布のひもが緩みがちですが、60歳までが最後の貯め期であることを意識して、資産形成のラストスパートをかけましょう。

ただし、貴重な貯め期を最大限に生かすため、ひと工夫が必要です。65歳以降の年金額の概算を「ねんきんネット」等で確認し、年金生活に対応できるよう、家計支出の見直しをしてください。そうすることによって、単に教育費分を貯蓄に振り向ける以上の貯蓄額を捻出でき、年金生活の予行演習もできるという、一石二鳥の効果が得られます。

最後の貯め期に続いて訪れる忍耐期は、公的年金が支給開始となる65歳までの5年間です。年収が激減するわけですから、貯蓄を増やすことはできなくても、減らさないように生活することを心がけます。貯め期の入り口で行った家計支出の見直しが、忍耐期を乗り越えるための基盤となります。貯め期の入り口で見直しをしていない人も、この忍耐期の入り口では必ず見直しを行いましょう。

このような事前準備が功を奏して、余裕をもって65歳を迎えることができたなら、そのまま年金生活に入るもよし、体力や気力があればもう少し働くもよし、年金開始を後ろにずらして年金額を増やすもよしなど、複数の選択肢から無理をせず自然体で選ぶことができます。選択肢がいろいろあり、どれを選んでもよいという状況は、人生を豊かにしてくれます。

「老後に備えてマイホーム」は正解か

ここまでライフステージ全体を概観してきました。それぞれのライフステージでのお金行動が次のライフステージに影響を与え、年金世代へとつながっていくことが、何となくでもお分かりいただけたのではないでしょうか。

次は、老後破綻を引き起こす最大の要素である「住宅」「教育」「収入減」に絞り、これらが家計を劣化させていくパターンを見ていきます。

「家賃を払うのはもったいない」と考える人は多いものです。「老後に家賃を払わなくてすむ」ことをメリットと考えれば、老後対策と捉えることもできるでしょう。ただし、住宅購入が老後対策として効果を発揮するには、収入が大幅に下落する60歳までに返済をほぼ終えている必要があります。

ところが、70歳を過ぎても返済が続く人が増えており、老後対策どころか老後を危うくする事態となっています。