【田中】分散型への期待は大きい一方、昨年のDigital Shift Summitでの鼎談テーマ「日本企業がデジタルシフトでGAFAに打ち勝つ方法」に戻らせていただきますと、ナノエコノミーもデジタルシフトの三つの基本的なプロセス、「デジタルで顧客とつながり、パーミッション(許可)を得て顧客データを取得して、利便性を高める」という流れは共通しています。アップルがアメリカで実現していることは「iPhoneで顧客とつながり、アップルウォッチのフィットネスアプリから運動強度や走る速度、脈拍数等の健康情報、運動中に聞いている音楽などの情報を取得して、本当に最適なサービスをリコメンデーションする」ということです。GAFAMが実現しているこのサービスに打ち勝つにはなにが必要でしょうか?

【島田】一番大事なのは、彼らがアクセスできていないデータが大量にあるということです。GAFAはスマホ中心ですが、東芝をはじめとする日本企業は苦労しながらも、インフラ整備などを丁寧に続けてきました。そこから取得できるデータは完全にGAFAに欠けているものです。その情報はGAFAで集めているデータと紐付かないといけません。これがスケールフリーネットワークですが、その紐付けができるのは個人だけです。

企業が勝手にやるのは絶対に駄目。個人が「これとこれがつながればメリットがある」と認識し、自ら行動することが極めて大切です。しかし、その前段階である現時点では、そもそもデータに自由にアクセスできるような環境にありません。それを丁寧に行うのが、私が6月2日に「東芝グループ経営方針」で説明した「ソフトウエア・ディファインド(※8)」の重要な意味です。データに自由にアクセスできる世界をつくることではじめて、次の世界が開けていくと考えています。

(※8)アプリケーション、ソフトウェア、ハードウェアをそれぞれ分離する考え方。

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