この人は何をしたら動いてくれるか

そうして13時をすぎたときに、ターゲットの女性スタッフに声をかけました。

「僕は西村博之といって、日本人でエンジニアをしていて……」と自己紹介してから、「長期滞在ビザを申請したいんですが、マレーシア人に知り合いがいなくて。申し訳ないんですが、サインしてもらえないですか」と切り出しました。

自分がちゃんとした日本人だということをアピールしたら、その女性は「いいですよ。あなたは別に悪い人じゃなさそうだから」とサインをしてくれたんです。

じつは、この女性スタッフに断られたらビザの取得は厳しいかなと思っていました。

お願いごとは1人目に失敗すると、2人目以降も「あの人も断ったんだから」と成功する確率が下がるんですよね。だから、なんとしても1人目で成功させたかったんです。

こうして僕は、制限時間内に長期滞在ビザを取ることができました。

交渉やお願いごとをするときに重要なのは、まず相手の状況を想像することです。

相手がどんな組織で働いていて、どんなモチベーションや目的で動いているかを具体的に想像できたほうが、仮説の精度が上がるので、成功する確率も高まります。

行動原理がわかれば相手の裏をかける

こういう対人の課題解決の場合に大事なのは、「相手のモチベーションが何か」です。

相手がどういうモチベーションで行動しているのか。

そうした行動原理をしっかりシミュレーションできていると、相手の裏をかけたりするわけです。

なかには、相手のモチベーションが思いもよらない場合もあります。

たとえば、超多忙のビジネスパーソンだと、こちらが必死にプレゼンしても取引してもらえないことがあります。いくらいい商品だとしても、相手が「もうこれ以上、仕事を増やしたくない」と思っていたら、契約しようというモチベーションにはなりません。

西村博之『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)
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そういう相手に対しては、「その人の手間にならないかたちで、その人の手柄になるには、どうすればいいか?」を考えるのがポイントです。

はんさえ押してもらえれば、あとは全部こちらがやるんで、何もしなくてもいいです」などとアピールすれば、相手はメリットがあるとわかるので、採用されやすくなりますよね。

世の中には、担当者がかわいいから契約するという人もいるぐらいなので、対人の問題解決のときは、相手のモチベーションをシミュレーションするクセをつけると、成功確率はぐっと上がると思います。

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