お願いごとを頼む相手の見つけ方

交渉や問題解決では、相手がどういう状況のときを狙うかで、成功確率が大きく変わります。

もう一つ、海外で体験した問題解決エピソードがあります。

僕はマレーシアの10年間の長期滞在ビザを持っているのですが、それを取得するときの話です。

この長期滞在ビザは現地でしか取得できないので、ビザの申請に必要な書類をオンラインで調べて、一式そろえてからマレーシアに行きました。ところが、いざ現地の役所へ行くと、その場になって「マレーシア人の証人とサインが必要だ」と言われたんです。

でも当然、マレーシアに知り合いは1人もいません。そのうえ、2日後には帰国するので、その日のうちに証人になってくれるマレーシア人を見つけないといけませんでした。

さて、どうしよう?

ムダなことはしたくないので、次にマレーシアを訪れたときに取得するという先延ばしは避けたい。いろいろと考えた結果、ホテルの受付の人にサインしてもらおうと考えました。

いちばん成功する確率が高いのは誰か?

受付のスタッフは何人かいたので、まず誰にお願いするかを決めます。

おじさんのスタッフは、面倒くさいから、と断られる確率が高そうでした。

それに、滞在中にマレーシアには男尊女卑な傾向があると感じていたので、女性のほうが男性客に対して丁寧に対応してくれると考え、ターゲットを若い女性スタッフに絞りました。

年齢が若いスタッフを選んだのにも理由があります。「いちばん若い人なら、面倒な話だからといってほかのスタッフに振ることができないだろうから、対応せざるをえなくなる」と職場の人間関係を想像したのです。

ターゲットを決めたら、次はいつお願いするかを考えました。

受付の仕事は、おそらく13時頃まではチェックアウトの業務で忙しくて、15時になると今度はチェックインが始まるのでまた慌ただしくなる。だから、いちばん対応してくれそうなのは13~15時の間だろうと。お客さんが来て交渉が中断したりすると、断られる確率が上がるので、相手が逃げづらい時間帯を狙うことにしました。