リーダーは常に後継者づくりを意識するべき

そんなことがないように、リーダーは常に後継者づくりを意識するべきです。これこそリーダーの仕事として一番大切なことだと思います。

ところが現実には、有力な後継者を育てようとするリーダーは稀で、特に政界ではそれが顕著です。このほど中国の習近平国家主席は異例の長期政権体制を築きましたが、自分の地位を脅かしそうな有力者や後継者を政権内からことごとく排除しました。同じようなことは、民間企業でもよく見られますよね。

それはリーダーとして無責任です。

僕が大阪府知事や大阪市長、日本維新の会の代表に就任していたときには、「このポジションは期間限定のもの」ということを常に強く意識していました。1人の人間が未来永劫、1つの組織の長を続けられるわけがありません。実現するまでに時間のかかる大きな構想にチャレンジするには、次のリーダー、次の次のリーダーが誕生する環境づくりをしなくてはいけないのです。僕と一緒に日本維新の会をつくった松井一郎さん(大阪市長)や僕の後を継いでくれた吉村洋文さん(大阪府知事)も全く同じ考え方です。

つい先日、自動車の交通量が多かった大阪・なんばの駅前広場が車両通行止めになりました。1年後には、歩行者がゆったり休憩したり食事やイベントを楽しんだりできる広場に整備される予定です。大阪中心部の御堂筋を緑化し歩行者優先にしていくという構想の一部で、僕が大阪府知事だった2010年頃から進めてきた計画です。それを松井さん、吉村さんが継続して実行してくれて、12年経った今、実現しようとしています。

大きなことを成し遂げようとしたら、長い時間がかかるんです。自分の任期中に必ず実現するような小さなビジョンではなく、大きなビジョンを掲げ、複数のリーダーがタスキをつないで10年、20年、ことによると30年かけて実現していく。それが大阪都構想を中心とする僕たちが構想した大阪大改革でした。

そこで必要になるのが、僕の次や、次の次を継いでくれるリーダーです。維新には幸い、吉村さんをはじめとする次の世代のリーダー候補が何人も存在します。

僕は維新の代表時代、大阪都構想戦略チームという特命チームをつくって、そのリーダーに当時大阪市議会議員だった吉村さんを指名しました。そこに吉村さん世代の有能なメンバーを集めて、思い切り働いてもらいました。その中から頭角を現したのが吉村さんで、僕の後の大阪市長、そして19年のダブル・クロス選挙を経て大阪府知事を務めています。今では全国的に知られた政治リーダーになっています。ほかにも吉村さん世代の有能なメンバーたちは、大阪の地方議員や国会議員として大活躍しています。

複数のリーダーがタスキをつないで、大きなビジョンを実現する。これは民間企業にもあてはまる考え方だと思います。今のリーダーには、その発想をもって、後継者を見出したり育てたりしてもらいたいですね。

(構成=プレジデント編集部 撮影=的野弘路)
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