「横浜で警察官を騙って強盗をやりました」

「関東の方で、特殊詐欺の受け子と出し子を2回ずつやりました。監視役もやりました」

署員による追及の矛先は、奪われた現金1000万円の出どころへと向かう。吉田は、にわかには信じ難い衝撃の顛末を明かし始めた。

「横浜で警察官を騙って強盗をやりました。僕は監視役で、被害者の家の玄関先で、実行犯から1000万円を預かりました」

大阪府警から神奈川県警に急報が飛んだ。

「吉田が大阪にいる」

その一報に、神奈川県警保土ケ谷署の帳場に詰めていた捜査員たちは色めき立った。即座に数名の捜査員が新横浜駅を発ち、大阪府警東淀川署へと向かった。同時に、裁判所へ逮捕令状の申請に走った。移動の時間を使って令状を仕上げる算段だ。東淀川署で、神奈川県警の捜査員に促され吉田が警察車両に乗り込む。日付が変わる。被疑者を乗せた警察車両が未明の東名高速を疾走した。

保土ケ谷署で逮捕状が執行されたのは12月29日だった。

パトカー
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指示役が実行犯の少年に伝えた恐ろしい計画

その2日前、12月27日。吉田は神奈川県内にいた。藤沢市の小田急線湘南台駅近くにある駐車場に、吉田とその共犯者となる山水博貴(仮名、当時29歳)、橋本勝太(仮名、当時24歳)、さらに少年2人の計5人が集まっていた。いずれも指示役の「タカヤマ」を名乗る人物から指図されて集合していた。全員がこのとき初対面だった。

現場で犯行を指揮したのが吉田だった。タカヤマの指示に応じて吉田が用意したキャリーケースの中には、すべて偽物の手錠、警察手帳、捜索差押え令状が入っていた。集まったメンバーに吉田がその使い方を説明する。少年には、事前に用意しておいたスーツに着替えるよう指示した。

「警察官を名乗って家の人を騙し、民家に入る。住人に抵抗されたら手錠をかけて現金を奪う」

吉田に具体的な犯行手順やターゲットとなる民家を指示したのは、全てタカヤマだった。朝8時に集合した5人は、指示されるがままに、まず千葉県へと向かった。吉田は電車。他の4人は山水が用意した車に乗り込んだ。

指示された民家には誰もおらず、この計画は失敗に終わった。その後も何軒かインターホンを押して回ったが、いずれも留守。実行には至らなかった。地の利もない、初めて訪れる場所で、指示された先へと手当たり次第に押し入ろうとする犯行態様だった。

男たちが、最後にたどり着いたのが横浜市保土ケ谷区にある被害者宅だった。