ギャンブルにハマり、借金返済のために「闇バイト」に手を出す
吉田は、ギャンブルにのめり込んだ末に借金を繰り返し、貸金業の男たちに追い詰められ、凶悪な犯行へと突き進んでいた。
高校を卒業した吉田は自衛隊に入隊した。だが3年勤務した2020年3月、自衛隊を退職した。自衛隊を辞めた理由は定かではないがその後、警備員として職を得て川崎市川崎区で独り暮らしを始めた。月給は手取りで15万~17万円程度。賭け事が好きで、パチンコなどのギャンブルに収入の多くをつぎ込む生活を送っていた。
「月に5万~10万円くらい使っていました。仕事上の人間関係がうまくいかず精神的にストレスがあって病院にも通っていました。不安がたまって、会社の上司にも相談したのですが改善されず、それでさらに飲酒とギャンブルを重ねてしまい……」
月給の半分以上を賭け事に費消させていた吉田は生活が立ち行かなくなり、消費者金融からの借金がかさんでいった。それでもギャンブルをやめられなかった。やがて違法な高利で金を貸し出すいわゆる闇金に手を出した。
手っ取り早く金を稼がないと返済できない……。犯罪に手を染めたのは、自衛隊を辞めて約7カ月後のことだった。
「ツイッターで『闇バイト』と検索しました。違法薬物の『運び』をやろうと思ったのですが、仕事はなかったです。そして『高額報酬』などと検索して、指示役のタカヤマとSNS上で知り合いました」
最初に手を染めたのは「キャッシュカードすり替え型詐欺」
初めは特殊詐欺だった。
事前に「かけ子」がかけた電話に騙されている高齢者の家を訪れ、現金やキャッシュカードを騙し取る「受け子」。受け子が取ってきたカードを使ってATMから現金を引き出す「出し子」。その2つを繰り返しやった。
「出し子が多かったです。受け子は2回……」
特殊詐欺を始めて間もない10月30日、吉田の姿は東京都大田区の男性(当時83歳)宅にあった。手口は、典型的なキャッシュカードすり替え型の詐欺だった。
事前に高齢者宅に騙しの電話がかけられている。例えば、「キャッシュカードが不正に使用されているため、預かる必要がある」などという内容だ。騙されていることが確認された家へ、指示役が吉田を向かわせる。吉田は、指示に従って用意しておいた偽の警察手帳を手に、警察官になりすまして男性宅を訪れた。
キャッシュカード2枚とその暗証番号のメモを封筒に入れるよう男性に指示する吉田。男性が目を離した隙に封筒を、別の封筒とすり替える。男性の手元にはダミーのポイントカードが入れられた封筒が残る。吉田は、「不正利用されている可能性がある口座のキャッシュカードなので、連絡があるまで、封を開けずに保管してください」などと男性に言う。吉田の鞄の中には、男性名義のキャッシュカードが入れられた封筒が入っているという手口だ。
吉田はその足で近くのコンビニへ行き、ATMで現金計95万7000円を引き出した。自身の報酬7万円を抜き取り、指示された駅まで移動し、残りの金とキャッシュカードをコインロッカーに入れた。