安倍元首相はなぜ「女系」を認めなかったのか
安倍氏は女性天皇を認めながら、なぜ女系天皇を排除しようとしたのか。今回の記事には説得力のある根拠が示されていない。わずかに1箇所、小泉内閣当時の平成17年(2005年)11月7日夜の発言として次のようにあるだけだ。
「女系も認めてしまえば、あらゆる人が天皇家に関われることになる。それには抵抗を感じる」
これは曖昧で不思議な発言だ。「あらゆる人が……関われることになる」とは何を意味するのだろうか。皇室と国民の区別さえ厳格に守られれば(つまり民間から養子を迎えたり、女性皇族の配偶者を国民のままとしたりしなければ)、皇室の「聖域」性が損なわれるおそれはない。
イギリスではこの度、女系のチャールズ新国王が即位された。だが、ご本人の資質や人柄、実績などとは別に、女系の血統が原因で王室の権威が一挙に低落したという事態にはまったくなっていない。またオランダでは、今のウィレム=アレクサンダー国王の前に3代の女王が続き、女系継承が重ねられている。しかし「あらゆる人が王室に関われることになる」(?)とか、それによって王室が混乱や危機に陥ったという事実はどこにもない。
男系限定には無理がある
そもそも、皇位継承資格がわが国の歴史で初めて「男系男子」に限定された明治時代当時(その頃のわが国では側室制度が当然と見られていた)はともかく、現代の世界において一夫一婦制の下で君主の資格を「男系」だけに限る無理なルールを採用している国は、日本以外には人口わずか4万人ほどの“ミニ国家”リヒテンシュタインぐらいしか存在しない。
安倍氏が女性天皇を認める自らの立場を踏まえて、より深く真摯に「思案を繰り返して」いれば、女系もあわせて認めざるを得ない事実に気づいていた可能性が、わずかでもあったかもしれない。しかし非業の死を遂げられたことは、その意味でもとても残念だった。

