「信仰が足りないからだ」母は娘に説教をした
私にとって母は、肉体的な親であると同時に霊の親(自分を伝道し導いてくれた人)でもあります。だからこそ、言いやすいこともあり反対に言いにくいこともありました。DVについて、母に余計な心配をかけたくないと考えていました。
母は、私が夫の暴力を相談してこなかったために、神側の力が働くことができず、問題がよりひどくなったと私を叱りました。統一教会の言葉で言えば、「アベル(※)を通さなかった」ということです。
※神側(信仰者、指導役の信者、教会側)にいる、つまり組織上、自分より上に立つ者。
そして、案の定、信仰が足りないからだと反省させられるばかりでした。一般的に考えて、娘がDVを受けていることを知ったら、娘をどうにか助けたいと思うのが親心ではないでしょうか。しかし母は、いつも霊的親の立場でしか私を見なくなっていました。幼い頃の母はもっと優しい人でした。統一教会に出会い、人が変わってしまいました。
朝食を断食しながら夫からサタンがいなくなることを祈る日々
その晩、私は夫の待っているアパートに戻され、蕩減条件(※)を立て、具体的には朝食断食をしながら、ただ夫の体からサタンがいなくなってくれることを願う、そんな日々を再び送っていくことになるのです。
※神が人間を救うために人間に命令する行為(水行や断食等)。サタンが屈服するだけの条件を満たさなければならない。
夫のDVが始まって以来、それに振り回されていた私は自分自身を振り返る余裕もありませんでした。ある時、ふとこの数カ月、生理が止まっていることに気が付きました。精神的につらかったから、体調に異変を来たしたのかもしれません。婦人科の敷居は高く感じましたが、念のためにと診察を受け、検査を終えると、思いがけない言葉をかけられたのです。
「妊娠です。おめでとうございます。もう4カ月ですよ。赤ちゃんの心音もしっかり聞こえるし、順調ですよ」