一番嫌っていた父のような男性と結婚してしまった

夫の非行は止まず、私は苦しんでいました。この世で一番嫌っていた父と夫とが重なるのです。一番憎んで、一番結婚したくなかった父のような人間と、私は結婚してしまったのです。父から夫へ、永遠に逃れることのできない呪縛のようでした。

統一教会では蕩減とうげん(※)という表現をよく使います。それは、罪を清算することだと教えられました。だから今の苦しみは、私の先祖や自身が犯した罪が故の現象なのだから、我慢して感謝していけば蕩減が晴れて良い方向に転換されると言われています。私も、いつもそう自分に言い聞かせて何とか精神を保っていました。

※「蕩」はすっかりなくすという意味。韓国では、借金を帳消しにすることを意味する。韓国のキリスト教会では〈赦し〉の意味で使われる。統一原理の救済観を表す概念だが、「ゆるし」の意味ではなく、「償い、罪滅ぼし」と原義とは真逆に解釈されている。また、日本の信者からの献金、献身を強要するために、植民地時代、韓国を最も迫害したとする日本が支払うべき「償い」「賠償」の意味で使われることが多いとされる。

「風呂場にカビが生えてる」…夫のDVが始まった

韓国人は情が深いともいいますが、喜怒哀楽が激しい部分を持っています。夫は喜怒哀楽の中でも、怒りに対する感情をコントロールすることが上手くできない人でした。そのため、気に入らないことがあると公共の場でも構わずに大声で怒鳴り散らします。私はそれが本当に恥ずかしくて嫌でたまりませんでした。いつも「ごめんなさい!」を連呼して、その怒りがひとまず静まるのを待つのです。夫の怒りのスイッチが入る原因は、たいてい私にしてみたら本当に些細なことなのです。

ある日、とうとう信じられないことが起きます。風呂場から出てきた夫が、いきなり私を怒鳴りつけてきたのです。

「おい! 何で風呂場にカビが生えてるんだ? ちゃんと掃除しろよ!」

私も仕事をしている身で、生活費をくれなくなった夫の分も働かなければならないプレッシャーもあり、正直ちゃんと掃除ができない時があったのは事実です。

「私も忙しくて……、なかなか掃除ができなかっ……」

バチーン‼ 平手が飛んできました。最初は何が起こったのかわかりませんでした。理解するのに少し時間が必要でした。あまりの驚きに痛みも感じず、ただひたすら目からは涙がこぼれ落ちてきました。