床をひっかくのは問題行動ではない

床のカーペットやソファの上でさかんに前足を掻いて、ボロボロにしてしまう犬がいます。

鹿野正顕『犬にウケる飼い方』(ワニブックスPLUS新書)
鹿野正顕『犬にウケる飼い方』(ワニブックスPLUS新書)

円運動のようにぐるぐる回りながら、カーペットを一生懸命ほじくってしまう犬もいます。

高価なカーペットやお気に入りのソファを台無しにされた飼い主さんはがっかりでしょうけれど、これは犬の習性なのである程度仕方ありません。

もともと犬は、地面に自分で穴を掘って寝床にしていました。子育ても巣穴でしていました。室内飼いになっても穴掘りの習性は残っているので、気に入った場所をせっせと掻いたり、掘る仕草をする犬は珍しくないのです。

犬は寝る前によく、前足で掘るような仕草をしてクルクルッと回る動作をしますが、あれは寝心地がよくなるように巣穴の床を整えているイメージなのです。

昔は庭に鎖でつないで犬を飼う家庭も多かったので、年配の愛犬家には、飼い犬に何度も地面を掘られた経験を持つ方もいると思います。庭の隅に穴を掘って、おもちゃや食べ物を隠したりもします。テリア系の犬はもともと穴や地中にいる害獣を駆除する犬種ですから、庭やドッグランで遊ばせると、喜んで穴掘りを始めることがあります。

このように、穴掘りの仕草は犬の習性なのだということを知っていれば、「カーペットをダメにする=うちの犬は問題行動をする」といった誤った認識をしないですむわけです。

ただし、室内で穴掘り行動をやめない場合、1頭での長時間の留守番が多いなど、なんらかのストレスや、運動不足が原因になっている可能性もあります。ひんぱんにやる場合、その行動を引き起こすストレス要因はないか、愛犬をよく観察することが大切です。

毎日の散歩だけでは運動不足になる

犬を飼う楽しみの一つが散歩です。基本の目安は、1回最低30分を朝・夕2回と一般にはいわれていますが、小型犬・中型犬・大型犬でも、犬種によっても、適切な散歩の距離や時間は異なってきます。

人間にとっては、30分程度の散歩でも「それなりの運動になる」と感じる方も多いかもしれません。でも犬にとっては、ほとんどの場合、散歩だけでは運動不足になってしまいます。

散歩は「気晴らしにはなっても運動にはならない」と思っていたほうがいいと思います。

たとえば、近所にドッグラン付きの公園があるような方は、そういう施設を利用して週に何度か十分な運動をさせるようにしたいところです。ただ、そうした環境にいる方は少数派でしょう。ふだんから家の中や、囲い付きの庭があれば庭に出して、愛犬とまめに遊んであげることが運動不足解消の基本と言えます。

室内でもある程度スペースがあれば、おもちゃを投げて取って来させる「レトリーブ」の遊びができますし、狭くてもロープ付きおもちゃでの引っ張りっこをするなどの遊びができます。散歩でもコースをいくつか作り、アップダウンが多く運動量が増えるロングコースを週に何回か盛り込むなど、日々の散歩を工夫するのも有効だと思います。

運動不足は筋力の低下や肥満・ストレスを溜めるなどの原因ともなります。散歩を欠かさないから大丈夫、と思うのではなく、運動不足を防ぐには「散歩プラス遊び」が必要と心得ましょう。