システム変更に伴って米陸軍が一時弱体化する
もう一つ、2027年が懸念される理由は、米国の軍事力の問題だ。
2021年3月16日に公表された米陸軍参謀総長文書「米陸軍マルチドメイン変革」という情報文書では、「米陸軍が、継続的な大規模戦闘作戦(LSCO)において敵対者を支配するための近代化と準備を整える時期として、2035年を目標点に定めた。2028年は我々の中間点であり、将来に関する我々の仮定を包括的に再評価し、それに応じて投資を調整する」とあり、2028年までにマルチドメイン作戦対応の部隊(MDO-capable Force)に変革を行うことが打ち出されている。
この変革のために、システム、装備の入れ替えに伴う一時的な米陸軍の弱体化が2024〜2027年と見られており、その米陸軍の一時的弱体化を狙って中国が軍事アクションを起こすのではないか、という懸念があるという。
2028年の台湾総統選で統一の是非が争点になる可能性
台湾有事が起きる可能性について、2027年説ではなく、2028年以降説を唱える人もいる。これは、英国の経済ビジネス・リサーチ・センター(CEBR)が2020年12月、中国が当初予測よりも5年早い2028年までに、アメリカを抜いて世界最大の経済大国になるとの予測を発表したのが一つの根拠だ。
2028年に中国が米国を超える超経済大国になっていたら、台湾世論も、台湾は自ら選んで中国に統一されるべきだ、という意見と、台湾という国家として国際社会の承認を得ていくべきだとする意見の対立がより拮抗し、2028年台湾総統選の争点になる可能性がある。
中国としては、とりあえず2028年に選ばれた総統が親中派か台湾派かを見極めたうえでアクションをとるであろう、という考え方だ。仮に、2028年の台湾総統が国民党で中国共産党の平和統一を望めば、中国も武力統一論を引っ込めざるをえないし、おそらくは国際社会もこれに抵抗できない。
ただ私は、中国が2028年に米国を超える経済大国になる場合、すでに習近平政権でもなく、もう少し開明的な指導部によって再度、改革開放路線と多極外交に舵を切っているのではないか、と思う。そうなれば中台統一も、もっと長期的ビジョンで進めようとするだろう。少なくとも、今の毛沢東回帰路線の習近平体制で、台湾世論が自ら望んで中国と統合されたいと心の底から思う状況はちょっと想像できないのである。