2035年までに台湾と中国を陸続きにするという計画

金燦栄は習近平政権になってからは、タカ派の発言が妙に目立つ御用学者になっており、あまりその発言は鵜呑みにはできない、と評されている。その主張には、学者としての冷静さ、客観性を欠くことがままある。ただ一ついえるのは、習近平の内心を忖度そんたくすることにかけては一流であり、彼の意見は習近平の考えていること、願っていることを比較的忠実に反映していると思われている。

2027年説を補強する材料としては、「国家総合立体交通ネットワーク計画綱要」がある。2021年2月24日に党中央と国務院が合同で発表したもので、2035年までに、便利でスムーズ、経済的で効率的、エコ集約型、スマートで先進的、安全で信頼できる国家総合立体交通網を完成させるという目標を打ち出している。

具体的には「全国123移動交通圏」(都市エリア1時間通勤、都市群2時間到達、全国主要都市3時間カバー)と「世界123速達物流圏」(国内翌日配達、周辺諸国2日以内配達、世界の主要都市3日以内配達)という二つの壮大な計画がぶち上げられているが、この「全国123移動交通圏」計画で特筆すべきは、全国主要大都市の中に台北が含まれており、2035年までに福建省の福州と台北が高速鉄道と高速道路で直に結ばれていることになっている。

つまり2035年までに、台湾は名実ともに中国の一部になっており、台湾海峡に大橋、あるいは海底トンネルがかけられている、ということになる。

香港―マカオ間の橋は台湾海峡の実験だった

福州と台北の距離は122kmで、この距離の海峡大橋を建設するとなると、どのくらいの時間がかかるのか。香港珠海マカオ大橋は全長55kmで2009年12月に着工し、2018年2月に完成、およそ8年かけて建設された。この大橋自体、台湾海峡に橋をかけるという野望のための実験的建設であったので、香港珠海マカオ大橋よりは工期が短いであろうといわれている。

香港・珠海・マカオを結ぶ大型海上自動車道である港珠澳大橋
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台湾海峡の中間線から向こう側の方面の部分だけなら、6〜7年かかるとすれば、35年までに台北福州大橋(トンネル)の完成、開通を実現するなら、遅くとも2028年には着工しなくてはならない。着工前に最短でも1年の準備期間を設け、水紋、地質調査などが必要だとすると2027年が台湾統一のリミットだ、ということになる。