「人に迷惑をかけたらダメだ」「恩を忘れたらダメだ」「人の役に立つ人間になれ」

そのとおりだ。そのとおりだからこそキツい。雁字搦めだ。身動きが取れなくなる。やりたいこともなにひとつやれなくなる。綺麗ごとは巡り巡ってあなたの可能性をつぶそうとする。綺麗ごとと優しさは別だ。綺麗ごとはたんなる同調圧力だ。強烈な同調圧力である。それに風穴を開けるのはだれだ? ダークヒーローだ。

マントをつけたヒーローのイメージ
写真=iStock.com/Avesun
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忖度のない生きざまを見せるのがヒカルのエンターテインメント

僕は他人の顔色をうかがわない。思ったことはそのまま口にする。

たとえば犯罪。犯罪は許されない行為だ。あたりまえだ。これは綺麗ごとでもなんでもない事実だ。法を犯した者は処罰されるべきだろう。でも犯罪者にも犯罪者の事情がある。窮地におちいった結果、やむにやまれず犯罪に手を染めてしまう人だっている。そうであれば僕は擁護する。ひとつの過ちがその人の全否定になるなんてあってはならない。だから周りがどう言おうと僕は擁護する。

犯罪のような重い話にかぎらずそうだ。僕は本音を隠さない。不味い料理には不味いと言う。つまらないものにはつまらないと言う。くだらない忖度そんたくはしない。それで何不自由なく生きていけている。むしろそんな人生のほうが楽しくて豊かだ。違うだろうか? 僕はそう思う。それを身をもって表現してみせるのが、ヒカル流のエンターテインメントだ。

僕はファミリーレストラン「ジョイフル」に声をかけてもらい、たくさんのメニューをプロデュースさせてもらっている。ありがたいことにどれも好評だ。2021年7月の販売開始から1年で累計400万食を突破したらしい。

ヒットの理由はいろいろあるだろうが、忖度せず本音で生きる僕のスタンスも貢献したと思っている。あのヒカルが美味いと言うなら美味いんだろう。そう思ってくれた人も少なからずいるはずだ。本音は信用を得られるのだ。

ダークヒーローがヒーローを倒す日も近い

ダークヒーローであること。その最大の強みはなんといってもコアで熱狂的な支持を得られることだ。たとえばマンガの人気キャラクター投票を見ると、善とも悪ともつかない不敵なキャラが上位につけることは珍しくない。

マンガ『ドラゴンボール』のベジータなんかがそうだ。主人公(ヒーロー)の孫悟空よりもベジータのほうが好きだという人は多い。僕もそのひとりだ。ベジータははじめ悪役だったが、そのあと改心して悟空の味方になった。とても頼もしい味方だ。でも完全に正義の人物になったわけではない。冷酷な一面も併せ持つ。そんな得体の知れないダークヒーローぶりがベジータの魅力だ。

ダークヒーローは予測がつかない。なにをやりだすかわからない。だからハラハラさせられる。ワクワクさせられる。目が離せない。

僕もそうあり続けたい。ダークヒーローがヒーローを凌駕する。そんな逆転劇を演じたい。そのときは近づいている。ジャイアントキリングだ。きっと熱狂を生むだろう。史上最高のエンターテインメントだ。そしてそこに新しい世界が開けるだろう。だれも見たことのない楽しい世界が。