なぜ日本は低成長の国になってしまったのか。経済アナリストの森永康平さんは「日本は政治家もメディアも国民も『政府が支出を拡大させすぎると財政破綻する』と本気で思っている。これは誤解だ。政府の財政支出が少ないと国の成長は見込めない」という――。

※本稿は、森永康平『「国の借金は問題ない」って本当ですか?』(技術評論社)の一部を再編集したものです。

宙に舞う大量の一万円札
写真=iStock.com/fatido
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日本のGDP成長率は25年以上横ばい

【森永】ここからは現実の日本経済の話をしていきましょうか。まず大前提として、通常の先進国であれば、年々経済成長をして、ディマンドプルインフレが起こっていることが普通です。つまり、GDPの額が毎年大きくなり、モノやサービスの物価は緩やかに上がっていきます。そうなれば、国民の所得も上がっていきます。というわけで、まずはGDPから見てみましょうか。

1997年を「1」とした時の、世界各国のGDPの成長率が次の図表1です。

【中村(大学生)】あ、あれ……? 日本だけ横ばい……先生、これ間違ってませんか? 世界第3位でこれってあり得ないんじゃ……。

【森永】現実を受け止めましょう。日本は1997年で経済成長がほぼ止まっており、ずーーーーーーっと横ばいです。いまだに世界第3位でいられるのは、高度経済成長期やバブル期の貯金でしょう。では次に、消費者物価指数(図表2)です。海外にもコアコアCPI(注)と同じような指標があるので、それを使って比較してみましょう。

注:消費者物価指数(CPI)から、天候などに左右されやすい生鮮食品とエネルギー品目を除いた指数。

【中村】これも日本だけ低いですね……。

【森永】基本は横ばい、微増と微減を繰り返している感じですね。ただしコアコアCPIは消費税で引き上げられた物価も含むので、それでも横ばいということは、実質的にマイナスと考えていいでしょう。