いまの現役世代は十分な医療を受けられるのか

2018年度は働く人の8人に1人が医療福祉分野に従事していました。もし現状の医療提供体制のままであれば、2040年度には5人に1人が医療福祉に従事しないと維持できなくなります(※2)。しかし、人材を必要とするのは他の産業も同じです。医療福祉分野にばかり人材を投入するのは現実的ではありません。

2040年といえば、現在57歳の人が後期高齢者の仲間入りをする年です。それ以降も人口は減り続けます(図表2)。

【図表2】人口構造の変化
15~64歳の生産年齢人口はこの先どんどん減少していく(内閣府「令和2年版高齢社会白書」より筆者作成)

現在32歳の人が後期高齢者となる2065年に、医療サービスを受けることはできるでしょうか。今行われている医療制度の見直しは、医療費の増大を抑えると同時に、医療の提供体制を持続可能なものにしていく取り組みです。その取り組みを知り、うまく使いこなすことで、現役世代も高齢者も、医療費を減らすための工夫は可能です。

(※2)「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省(平成30年5月21日)より

もう1つの制度改正「大病院の紹介状なし受診」

紹介状なしで大病院にかかったときは特別料金がかかりますが、2022年10月から、対象となる大病院の範囲が広がり、特別料金の最低額が引き上げられています。これまでは大学病院等の特定機能病院と200床以上の地域医療支援病院が対象でしたが、200床以上の紹介受診重点医療機関(※3)が加わっています。

特別料金の対象となるのは初診の患者だけでなく、大病院での治療が終わり、地域の医療機関への紹介状を交付されたにもかかわらず、あえて大病院を受診する患者も対象です。初診の特別料金は、医科が5000円以上から7000円以上、歯科が3000円以上から5000円以上に、再診の特別料金は、医科が2500円以上から3000円以上、歯科が1500円以上から1900円以上にそれぞれアップしています。

あくまでも最低額ですから、病院によってはもっと高額の料金を徴収するところもあります。特別料金は選定療養費(※4)として病院が独自に決めるものですから公的医療保険の対象にはならず、高額療養費制度は適用になりません。

(※3)紹介患者への外来を基本とする医療機関として都道府県が公表した病院(2023年3月ごろの公表を予定)
(※4)保険診療との併用が認められている保険対象外の療養のうち、保険導入を前提とせず、患者の希望により行うもの