1万円札は1万円分の「信用のチケット」

しかし、お金とはそんな単純なものではありません。

僕は、お金とは自分の欲望を満たす道具ではなく、「チケット」のようなものだと考えています。何かを手にするときに提示を求められるチケットで、しかもそこには「信用」というスタンプが押されているのです。自分に対する信用に基づいて付与され、その範囲内では自由に使うことができる。それがお金というものです。1000円札には1000円分の信用が、1万円札には1万円分の信用が、紐付けられています。

では、誰から信用スタンプを押してもらっているかと言えば、社会からです。そして誰に対してスタンプが押されているかというと、あなたです。「私たちはあなたのことを信用しましたよ。だから自由に使っていいですよ」と世の中から手渡されたものが、このチケットだと考えてください。

「お金の本質は信用」だとはよく言われることですが、これは「使い方を信用されている」ということ。名優たちに出演オファーが殺到するように、いいお金の使い方をする人には、おのずとお金が集まってきます。

社会からの信用がなければ、何もできない

本書の第3章「仕事で自分の価値を高めるには」では、働くことと投資についてお伝えしてきました。その中で、仕事を受けるときに対価は気にしない、「もっとほしい」と交渉することはないと言いました。

この「何を対価と考えるか」は働き方の話であり、同時に本稿のテーマである「しあわせに生きるために必要な自己投資の話」にもつながってきますので、まずはここから入りたいと思います。

お金がほしくないと言うと、格好つけているように思われることもあります。でも、僕が心の底から増やしたいと考えているのは、お金ではありません。世の中からの信用です。「これからの10年で、何を頑張ろうか」と考えたとき、僕はいつも「信用を貯める10年にしよう」という答えに行き着くのです。

なぜ、そこまで信用を重視するのか。

他人から、そして社会からの信用がなければ、人は何もできないからです。人間はひとりでは生きていけません。そして、社会に交わらずに生きることもできません。社会の中で、人と共に生きていく以上、「この人なら大丈夫」と信用されなければ何もできないのです。「信用スタンプ付きチケット」も渡されず、力を貸してもらえず、応援もしてもらえない。機会も与えてもらえないでしょう。

逆に、信用があれば、そのときの実力以上にさまざまな挑戦もできます。投資の観点から言っても、信用を増やすことが、もっともレバレッジが効くわけです。