※本稿は、松浦弥太郎『僕が考える投資について』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
苦労せずに得たお金ではしあわせにならない
第1回では、「金融商品よりも自分に投資をしよう」というお話をしてきました。お金を増やすのではなく、自分の楽しみ、生きがい、そのベースとなる心身の健康を生み出していく。そんなお話です。
投資の本質は、先の未来を考えること。そのためにはまず自己管理のための習慣をつくる必要があること。自分を成長させる学びに投資する大切さ。自分の興味にも、仕事にも学びが生きてくること。人や旅に教えてもらい、素直に影響を受けること。
これらが自分の望む未来の自分をかたちづくっていくのだということが、わかっていただけたのではないかと思います。
本書では、金融商品への投資について具体的な方法を書くつもりはありません。基本的に、日々、一喜一憂するようなマネーゲームに乗ることには反対なのです。そこにお金や時間を使うのはもったいないことだと感じています。
一攫千金を狙ったり手や足を動かさずに儲けることができたとしても、苦労せずに得たお金は人をしあわせにはしてくれませんし、何より自分自身の成長にはつながらないのです。もちろん、プロの投資家にはそれなりの努力と苦労があるのは知っています。しかも、それはほんのわずかな成功者の例だと思います。
投資の「元本」、お金の本質とは
では、お金は大事にしなくていいのか。
もちろん、そんなことはありません。生きていくためには最低限のお金は必要ですし、何より「お金」、そして「時間」は、自分への投資の元本──価値を生み出すための元手となる財産──なのです。
まず、お金について考えてみましょう。
そもそも、僕たちにとってお金とはどういう存在なのでしょうか。
これまでお金についてあまり真剣に考えてこなかった方は、「お金とは、ほしいものを手に入れるために必要な道具」としか捉えていないかもしれません。自分の欲求を満たすために必要なものだから、お金が多ければ多いほど自由になれるし、しあわせになれるのだろうと。