アメリカからも疑念を持たれる

アメリカにとって、沖縄の地政学的意味は極めて重要です。

イギリスのロンドンと沖縄を味方につけておけば、地球全域をアメリカの勢力圏に置けるのです。アリューシャン列島からオーストラリアまで、北太平洋の西辺をぐるりと囲む線のちょうど真ん中に位置するのが沖縄です。太平洋に大陸国家を進出させないための要の位置です。

アメリカとしては、日本本土を捨ててでも沖縄を守るぐらい、重要なのです。そこから出て行けというのは、地球全体の軍事バランスを崩すのかと、アメリカの政府高官は鳩山に疑念を抱きます。

実際にはそんな高尚なことではなく、アメリカ側の想定をはるかに超える、恐るべき政権担当能力の欠如でした。

沖縄で反基地運動が盛り上がる中、鳩山内閣成立後には、在日米軍の高官が鳩山に基本からレクチャーする羽目になりました。かつてのソ連、今の中国に対する抑止力から説明された鳩山が言ったのは、「抑止力という言葉の意味がよく分かった」との有名な一言でした。

平成22年5月4日、鳩山は沖縄県知事の仲井眞弘多と会談し、県外移設方針を撤回します。同月28日には改めて普天間基地移設方針と沖縄県民の負担軽減について、連立する社民党が反対したまま閣議決定を行い、反発する福島瑞穂は大臣を罷免されます。

政権があっという間に崩壊したワケ

これをきっかけに、社民党は連立を離脱しました。政権はガタガタです。鳩山内閣発足時に72%超あった内閣支持率も、この頃には20%に落ち込んでいます。

6月2日、鳩山は退陣を表明しました。沖縄のことで、ここまで政府が振り回された原因は、参議院です。

倉山満『沈鬱の平成政治史 なぜ日本人は報われないのか?』(扶桑社新書)
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民主党は参議院第一党ですが、単独過半数には届きません。このため、衆院でたかだか7議席・参院で5議席という泡沫政党であるはずの社民党の言うことを聞かなければならなかったのです。

幹事長の小沢一郎は、参院で社民党を切っても良いように、数を増やす工作はしていましたが、工作の完成と同時に鳩山内閣は崩壊しました。上手く行かなかった決定的な原因は、公明党が自民党と手を切ってくれなかったことです。

公明党は民主党の政権担当能力の欠如を見極め、「連立野党」として自民党に付き合いました。慧眼すぎます。

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