日本でEV化が進まない理由

欧米中で進むEVシフトの流れがなかなか日本で進まない原因は、日本の大手自動車メーカーにある。トヨタをはじめとする日本の大手自動車メーカーはハイブリッド車を得意としているが、そのハイブリッド車は欧州・米国・中国では販売禁止となる見込みだ。

振り返ると2021年1月、菅義偉首相(当時)は「2035年までに電動車を100%にする」という目標を発表した。この「電動車」にはハイブリッド車が含まれていた。海外では販売禁止になることが固まっているのに、なぜ日本政府はこんな方針を立ててしまったのか。そこには大手自動車メーカーの意向が働いたと考えられる。

竹内一正『イーロン・マスクはスティーブ・ジョブズを超えたのか』(PHPビジネス新書)
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この発表に先立つ2020年12月、日本経済新聞電子版に「車大手『HVは残して』と要請」という記事が出ていた。

この記事によると、経済産業省は2030年代半ばに国内でガソリン車の新車販売をなくすことを検討していた。そこにトヨタなど大手自動車メーカーが「HV(ハイブリッド車)を排除しないようアピールした」というのだ。前述した菅首相の発表の裏にはこうした動きがあった。

だが、新たな変化を受け入れず、大手自動車メーカーという既得権者のご都合に合わせていては、日本経済の未来は描けない。

日本の自動車、家電、半導体が世界をリードできた最大の要因は、新たな変化を受け入れ積極的に対応してきたからだ。ここで変化に挑む姿勢を失えば、失われた30年が、40年になってしまうだけだ。

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