詐欺師は、あまり知られていないモデルや俳優らの顔写真を無断転載するなどして作成した偽アカを使い、SNSやアプリを通じて接近。「今後の2人の生活費のために投資しよう」などと言葉巧みに現金を要求する。
偽アカに悪用された顔写真は誰の写真なのか、偽アカを作成したのは誰なのか――。
真崎さんは、その特定に挑む。詐欺師の身元まで特定できなくても、写真が別人のものだとわかれば、「詐欺師による洗脳やマインドコントロールを解いてあげることができる」と真崎さんは話す。特定作業は無償という。
「特別な資格があるわけでもないので、お金を取ることはできないと思って」
特定に半年を要したことも
「このアカウントは本物ですか?」
真崎さんのSNSには、毎日のように相談が届く。この1年間で約300件を引き受け、約8割の顔写真の真偽を見分けた。ツールはスマホ1台。基本は画像検索の繰り返しだ。
グーグルやロシア版グーグルといわれる「ヤンデックス」など、四つのサイトを横断検索できる「リバースイメージサーチ」という画像検索アプリを利用している。SNSも調べ、アカウント名を数文字入れ替えて検索したり、類似するアカウントがないかを調査したりする。
例えば、「フランク」という文字が含まれるアカウントを調べると、似た名前のアカウントが次々と見つかった。すべて同じ韓国籍のモデルの写真を流用していた。画像検索すると、約40個のアカウントがこのモデルの画像を流用し、それぞれ別の人物を名乗っていた。
真崎さんがモデル本人にこの事実を伝えると、「盗用注意」とモデル自らが、インスタグラムで注意喚起してくれた。
特定までの最長記録は半年という。一つのアカウントで計100枚の写真を検索しても本人に行き当たらないこともあった。
しかし、「時間を置いてもう一度検索すると、結果が変わるのです。Bさんを探していると、Eさんが見つかったりする」。特定のきっかけになればと、未解決の顔は忘れないようにしているという。
きっかけは米国在住の韓国籍エンジニアを名乗る男性からのDM
私も真崎さんに教わった特定方法を試みた。
暗号資産(仮想通貨)による投資詐欺を仕掛けてきたというアカウント。192件の投稿があり、フォロワーは257。スーツ姿やプールサイドでくつろぐ男性が写っている。短髪で筋肉質の体つき。ペットやドリンクの写真もある。一見すると偽アカとは思えない。
写真を一枚ずつ検索アプリにかけると、四つのサイトで別々の結果が表示され、SNSや写真をまとめたサイトなどが大量に出てきた。しかも英語や中国語、ロシア語と多言語だ。何のサイトかもよくわからないまま、しらみつぶしにサイトを訪問してみたが、手がかりは見つからない。