東芝の新しい経営者は、いま何を考えているのか。3月に就任した島田太郎社長は「自分より頭のいい人は社内にいくらでもいる。だから私のやるべき仕事は、頭の良さや細かい指示ではない。みんなに納得してもらえる『コンセプト』を示し、それを広げる努力をすることだ」という――。(前編/全2回)
島田太郎社長
撮影=遠藤素子

 

社長就任後もSNSでの発信を続けている

――島田社長は大企業のトップには珍しくSNSを積極的に活用されています。名刺にメールアドレスを載せていますね。

名刺のメールアドレスは、最初から入っていたので気にもしていませんでした。たしかに珍しいかもしれませんね。社長就任後、FacebookやNewsPicksでの発信も続けています。

僕にとって、メールやSNSでのやり取りはとても大事なものです。社長に就任したときに、「皆さんメールください」と社員に呼び掛けたら、100通ほどのメールが来ました。すべて返信したのですが、まさか本人から返信が来るとは思っていなかったようで、驚いた社員もいたようです。

「自分が社長ならどうするか」入社来意識してきたこと

――どんな思いで東芝のトップを引き受けたのですか。

僕は、以前働いていたシーメンスでも東芝でも、「自分が社長だったらどうするか」と考えながら仕事に取り組んできました。東芝でも、普段からそう考えながら働いていたところに社長就任の話が来たので、自分の考えを実行するだけだという思いで引き受けました。

仕事への取り組み方は、シーメンスでの経験が影響しているかもしれません。個々の社員がオーナーシップを持ちつつ働く「オーナーシップカルチャー」を叩き込まれました。重要なのは、目的が「社長になること」になってはいけないということです。そうではなく、「自分が社長だったらどうするか」と想像しながら日々の業務に取り組むということですね。

そうしてこれまでの考えをまとめたものが、6月に発表した「東芝グループ経営方針」です。それまで温めてきたデータビジネスを全面に出し、発表に至るまでの約3カ月間は、社内でもかなりいろいろな議論がありました。会社を巨大な船に例えれば、我々が目指す方向に舵を切り、しずしずと動き出したところです。