高校時代の“遺産”でどんどん仕事が舞い込む謎

現役引退後は自ら立ち上げた株式会社斎藤佑樹の代表取締役に就任すると、大手企業のCMに次々と出演。情報番組でも活躍している。見事なセカンドキャリアを構築している。

ただ、甲子園の優勝投手よりも、NPBで活躍した選手の方が、野球選手としての“格”は上だ。それでも斎藤氏の場合は、NPBの実績がさほどないのに、高校時代の“遺産”で仕事が舞い込んでくる。

それだけ、全身アイボリーカラーにエンジのWASEDAのロゴのユニフォームに身を包んだ、あの鮮烈なイメージが33歳になった今もなお斎藤氏にあるということなのかもしれない。とはいえ、「気持ち悪い」とまでは言わないまでも、その過熱人気ぶりに違和感を覚えるスポーツ界の人は潜在的に多いのだ。

かつて箱根駅伝5区で大活躍して「山の神」と呼ばれた今井正人(トヨタ自動車九州)は38歳になった今も現役だ。大学卒業後も「山の神」と騒がれた今井は、森下広一監督から「いつまでも『山の神』と言われないようにしないとな」とハッパをかけられ、奮起した。

「僕自身は大変だなと思ったことはないんです。もう箱根を走ることはないわけですし、実業団では『マラソンをやりたい!』という気持ちが強かったですからね。箱根駅伝は自分をアピールできた場所でした。5区で活躍ができたのはすごくうれしいことですし、名前を覚えてもらえたこともありがたいと思います。箱根駅伝のイメージを払拭するくらい、マラソンで結果を出したいなというモチベーションで今も競技をしています」 

今井は箱根駅伝の栄光を引きずることなく、マラソンに挑戦し続けている。大学を卒業して16年経過した今年2月の大阪マラソンではセカンドベストの2時間8分12秒をマーク。2024年パリ五輪代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場権をつかんだ。

結果がすべてとはいわないが、スポーツの世界は“勝者”が注目を浴びるべき。だからNPBで活躍できなかった斎藤氏をメディアがこぞって起用する現象は摩訶不思議であり、時代遅れな印象を受けるのである。

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