社会部長を追及すると「ここだけの話にしてほしい」

本人に確認しなくてはいけないのですが、既に九八年に亡くなっていたので、書かないという選択肢もあったかもしれませんが、統一教会ウオッチャーのフリージャーナリストも知っていたので、書かないわけにはいかないと考えました。

【元木】朝日の身内に、向こう側に内通している人間がいた。それもこの問題では信頼していた編集委員だったというのは、赤報隊事件を追いかけている記者の人たちにはやりきれなかっただろうと思います。

もっとひどいのは、現場が統一教会と戦争をしているのに、上の人間たちが、向こう側と手打ちの会合を密かに持っていたということです。

【樋田】阪神支局事件の翌年の六月初め、襲撃事件の取材を取りまとめている東京本社社会部の遊軍キャップ、T記者(故人)が社会部長を追及すると、「すべて話すから、ここだけの話にしてほしい」と言って、最近、広報担当の役員と東京本社編集局の局次長の二人が、世界日報の社長や編集局長らと会食したことを認めたのです。

私たちが懸命に取材している時に…

【樋田】朝日のベテラン編集委員が仲介して、朝日と世界日報が批判し合っている問題について、「手打ちをしようじゃないか」と持ち掛け、朝日側は「そんなことを言っても」と言いながら、最初は世界日報側、次は朝日が費用もって会食をしたというのです。

社として手打ちをしたことはないと言っても、相手側は、朝日とそういう話をしたと受け取るだろう、と社会部長は話したというのです。これは、遊軍キャップだった記者が「コピー不可」と言って、私を含めた少数の取材班のメンバーに見せたのですが、私たちが懸命に取材している時に、上層部が敵側と談合した。社の幹部たちが報道機関としては決してやってはいけないことをやってしまったのです。

【元木】よくここまでお書きになりましたね。

【樋田】悩みましたね、それは悩みました。

【元木】そうして世界日報で連載していた朝日新聞批判の連載が終わり、偶然かもしれないが、赤報隊の攻撃がその頃を境に、朝日からリクルートや愛知韓国人会館へと移っていったそうですね。私には無関係だとは思えないのですが。

警察は新右翼の捜査は熱心にやってくれたようだが、統一教会への捜査は及び腰だったという。