「慰安婦誤報問題」以上の読者離れを恐れているのか

樋田氏はこうも話してくれた。

「明治大学の吉田忠雄教授から聞いた話ですが、元警察官僚で総理府総務副長官の経験もあった弘津恭輔氏が『勝共連合が少々むちゃをしても、共産党への対抗勢力だから許される』と発言したと聞いています」

こういう警察側の姿勢が、統一教会を追い詰められなかった大きな要因ではなかったか、そうした疑問は残る。

樋田氏の本は、朝日新聞の記者たちが、地を這うような取材で赤報隊事件を追いかけていたかを後世に残す貴重な記録である。

だが、そんな現場を無視して、社の幹部たちが取材対象と手打ちをしていたというのでは、記者たちは「ふざけるな」と思うのは当然である。

安倍元首相暗殺を機に、統一教会批判をメディアが競って報じているが、統一教会側も死に物狂いで正当性を訴え、メディア批判をあらわにしている。

もし、統一教会が、1988年に行われたという、世界日報と朝日新聞の幹部たちの手打ちの内容をすべて明かしたら、朝日新聞の統一教会問題に対する姿勢を疑問視する声が巻き起こるに違いない。

朝日新聞批判は、慰安婦誤報問題以上に厳しくなり、今以上の読者離れを引き起こすことは間違いない。朝日新聞の統一教会報道に腰が引けて見えるのは、このことがあるのではないか、そう思えてならないのだ。

朝日ジャーナルで統一教会批判を繰り広げ、世論を喚起した筑紫哲也氏が生きていれば、今の朝日新聞に何といっただろう。

朝火新聞社
写真=iStock.com/mizoula
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「二度死ぬ」ことになりかねない

かつて、TBSのプロデューサーがオウム真理教側に事前にビデオを見せていたことが大きな問題になった時、『NEWS23』(TBS)の『多事争論』で筑紫氏はこう語った。

「報道機関というのは形のある物を作ったり売ったりする機関ではありません。そういう機関が存立できる最大のベースというのは何かといえば、信頼性です。特に視聴者との関係においての信頼感であります。

その意味で、TBSは今日、死んだに等しいと思います。過ちを犯したということもさることながら、その過ちに対して、どこまで真正面から対応できるか、つまり、その後の処理の仕方というのがほとんど死活にかかわるということを、これまでも申し上げてきました。その点でもTBSは過ちを犯したと私は思います」〔筑紫哲也『ニュースキャスター』(集英社新書)より〕

筑紫氏が朝日新聞を退社したのは1989年。まだ在籍していた彼が、社の幹部たちが統一教会との手打ちをしていたと知ったならば、「朝日新聞は死んだ」といっただろう。

朝日新聞は今回の統一教会問題にどこまで切り込めるのか。それによっては「朝日新聞は二度死ぬ」ことになりかねない。

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