2人目と新居購入

長男誕生から2年後、30代半ばに差し掛かった妻が2人目を希望。狩野さんは、「長男を一人っ子にしておくのもどうか」と考え同意。このときも狩野さんは、「もう一人って言い出すんだから、もう離婚なんて言わないだろう」と考えたという。

次男が生まれた後も、息子たちを風呂に入れるのは狩野さんの役目だった。通常、息子たちを風呂から出すときに、妻を呼んで妻が服を着せていたが、何度呼んでもコタツで寝てしまい来ないことがしばしば。仕方なく狩野さんは、ボタボタと水をしたたらせながら息子たちに服を着せた。

3歳になった長男は、「今日はお母さんとお風呂に入る」という日があった。だが妻は、先に狩野さんと次男が入っている間に寝てしまうことが少なくない。起こしてもなかなか起きず、挙げ句の果てには、「疲れてるのよ!」と長男を怒鳴る始末。泣く長男をなだめて、次男を1人寝かせ、狩野さんが2回目の入浴をするしかなかった。

1999年冬。妻が今度は戸建ての家を欲しがり出した。狩野さんは長男だが、実家には未婚の妹がいた。狩野さんは、「実家は妹にやろう」と考え、家の購入を承諾。同時に、「もう離婚なんて言わないだろう」とまた思った。

土地探しを始めた妻は、坪単価35万円・80坪の土地を見つけてきて、狩野さんは驚愕。妻は、「今貯金が700万円あるから、○○して××すれば……」と説明を始めるが、狩野さんは面倒くさがって聞こうとしない。狩野さんは、「妻が大丈夫と言うなら大丈夫なんだろう」と思い、契約書にハンコを押した。

夕暮れの住宅地
写真=iStock.com/jimfeng
※写真はイメージです

そして妻に、「俺の部屋はいらないからガレージを作ってくれ。俺はガレージに車と住む」と伝えたが、あっさり却下。

「半分金を出す相手に、『却下』っておかしくないですか? 私はガレージがボツになった時点で、家のことには全く関心がなくなりました」

妻は複数のハウスメーカーで相談していたようだが、狩野さんは完全にノータッチ。3社からの見積もりが出たとき、妻は「どれがいい?」と言ってきたが、狩野さんは、「一番安いトコ」と即答。結局購入したのは3社の中でも一番高い家。3400万円だった。

「土地と合わせて6200万円(税別)。『これだけの借金をするんだから、もう離婚はないんだろうな』とまた考えました。なんでこんなに婚姻を継続しようと思ったのか、自分でも訳が分かりません」

2000年春、家が完成。妻が「ガーデニングをしたい」と言うため、外構にコンクリートは打たず。しかし実際は放置され、草ぼうぼう。狩野さんが1人で草取りをする羽目に陥り、近所で「偉い旦那さんね」と評判になった。

その冬、雪が積もった。車いじりが趣味の狩野さんは、早朝、自分と妻の車をスタッドレスタイヤに交換し、家に戻った途端、妻が来て言った。「あなたの車を貸して。私の車、スタッドレスタイヤじゃないんだもん」。

狩野さんは「あなたの車のタイヤも交換したんですけど」と言うと、「あ、そう」とだけ言って去っていった。

「この時すでに妻とはほとんど会話をしない仲になっていましたが、それでも夫として最低限の務めだと思って交換してあげたのです。そんな私に『車をよこせ』と言って、謝罪もお礼もしない妻が理解できませんでした」