銃規制を緩和し、脱炭素政策をやめ、宗教教育を進める…
・銃の携帯を免許制にしているニューヨーク州に対し、憲法違反との判断を下した。「銃を自由に持ち歩く権利を認めるべき」と指摘している。
・脱炭素政策を進めるバイデン政権に対し、「政府はエネルギー会社のCO2排出基準を強制できない」という判断を下した。
・宗教学校の学費に公的補助を認めないメーン州法について違憲だと判断。宗教教育に国民の税金を使うことが認められ、波紋を呼んでいる。
・脱炭素政策を進めるバイデン政権に対し、「政府はエネルギー会社のCO2排出基準を強制できない」という判断を下した。
・宗教学校の学費に公的補助を認めないメーン州法について違憲だと判断。宗教教育に国民の税金を使うことが認められ、波紋を呼んでいる。
銃規制緩和、環境規制緩和、宗教教育の復活、すべて保守共和党の政策目標だ。
中でも多くの人が驚愕したのが、「公教育に宗教を持ち込むべきではない」という常識を覆したことだ。
アメリカでは信教の自由が保障されている。だからこそ、公立校で宗教色が強まれば、子供から選択の自由が奪われると危惧されているのだ。ちなみにこの「宗教」は仏教やイスラム教ではなく、キリスト教に限られる。
さらに別の不安も広がっている。
最高裁の保守派の1人でカトリック教徒のトーマス判事が、「中絶だけでなく、避妊と同性婚も合憲かどうか、改めて判断されるべき」と公言したのだ。
ここまで言えるのは、現在の最高裁なら違憲にできると踏んでいるからだろう。
つまり、これはただ中絶だけの問題ではない。今後同性婚や避妊など、他の権利も取り上げられてしまう恐れが、現実になりつつある。
男性も「人権を失ったのは初めてだ」
今回の最高裁判断では、女性だけでなく男性もショックを隠せなかった。
31歳の市役所職員トーマスは「衝撃だよ。アメリカ人が人権を失うというのは、初めての事だから」と話す。中絶の違法化は、自由と権利を標榜してきたアメリカ人が「権利を失う」という、歴史始まって以来の異常事態と捉える見方が多い。
20世紀後半、アメリカではフェミニズム運動や公民権運動が起こった。女性やマイノリティが白人男性と同じ権利を得て、より平等な社会へと移行する時代の始まりだった。中絶の権利もその過程で獲得したものだ。21世紀になると、同性婚などLGBTQの権利も拡大される。
多くのアメリカ人はこうした権利獲得を祝い、あらゆる人が自由に幸せに生きられる社会こそが、アメリカのあるべき姿と信じてきた。ところがその一つが奪い去られただけでなく、他の権利まで危機に瀕している。まさに崖っぷちだ。