「プーチンはエリートの間で支持を失っている」
2014年にロシアが無血でクリミアを併合した時、国民は陶酔状態となってプーチン支持に結集した。しかし、8年後のウクライナ戦争は凄惨な市街戦となり、エリートや知識層の間で動揺が広がっているようだ。
著名な社会学者、オリガ・クリシュタノフスカヤ氏は、「プーチンはエリートの間で支持を失っている。政権幹部の忠誠心にも陰りが出始めた。情報源をテレビからネットに切り替える人が増えており、誰もが真実の情報を求めている」と分析した。
ロシアは口コミ社会で、犬の散歩や台所の会話で、人々は情報交換し、激しい議論を展開しているという。
欧米が発動した過去最大の経済制裁も今後、庶民の生活を脅かし、生活水準低下を招くのは必至だ。生活苦も反戦機運を高める要素となる。
社会学者のグリゴリー・ユーディン氏は「メドゥーサ」のインタビューで、「反戦デモに参加すれば、脳震盪を起こすほど殴られたり、刑務所で下着を脱ぐよう命じられたり、前科一犯として就活が難しくなると警告される」としながら、「ウクライナへの電撃戦が失敗したのは明らかだ。ロシア側はすでに大量の死傷者を出し、焦ってクラスター爆弾を使用するなど非人道的攻撃をしている。ウクライナに親戚を持つロシア人も多く、無謀な戦争への反発が高まっている」と述べた。
「ロシアの歴史上、最も無意味な戦争」(同氏)とされるウクライナ戦が長引くほど、ロシア社会の反戦機運も高まる可能性がある。
戒厳令を敷けば無期限の「戦時大統領」に?
ロシアの今後の方向としては、プーチン政権が反政府運動を鎮圧し、外国との交流を制限する「要塞」化のシナリオが有力だ。
頑固なプーチン大統領は、ウクライナ軍の抵抗や欧米の制裁がいくら強くとも、ウクライナの分割・解体という最終目標に向けて突き進むだろう。停戦や撤退は敗北を意味し、政権基盤を揺るがすことになる。
プーチン氏にとって、政権のサバイバルは至上命題であり、国内の反戦論や国際社会の制裁に対抗し、戒厳令を導入する可能性もある。インターネットやSNSを遮断し、国際関係を制限し、総動員令を敷いて危機突破を図るというシナリオだ。
戒厳令を発動する場合、2024年3月に実施予定の大統領選も中止されよう。プーチン氏は「戦時大統領」として強権体制を維持、強化することになる。