英国与党の党首選が示す物価対策の難しさ

世界的にインフレの加速が問題となっている。そのうち、日本を含めた多くの国々で物価高対策(減税や価格統制)を行うケースが相次いでいる。

しかし今回の世界的なインフレ加速はエネルギーの供給減が主因であるため、減税や価格統制はその場しのぎの対策に過ぎない。9月に新首相が誕生する英国でも、減税の在り方が議論になっている。

2022年7月25日、BBCのテレビ討論会「Tory leadership debate live」に参加する前のリズ・トラス外相とリシ・スナク前財務相。保守党の指導者候補が真っ向勝負の討論を繰り広げた
写真=PA Images/時事通信フォト
2022年7月25日、BBCのテレビ討論会「Tory leadership debate live」に参加する前のリズ・トラス外相とリシ・スナク前財務相。保守党の指導者候補が真っ向勝負の討論を繰り広げた

英国では、ボリス・ジョンソン首相が7月初めに辞意を表明したことに伴い、9月5日に与党・保守党の党首選が行われる予定だ。

一般党員によるオンラインないしは郵送による投票が行われ、そこで選出される新党首が新首相に就任することになる。すでに最終候補者は、リシ・スナク前財務相とリズ・トラス外相の二人に絞られている。

スナク前財務相は、その名前がヒンディー語であることが示すように、インドにルーツを持っている。仮に党首選で勝利すれば、初めてのインド系の首相ということになる。

一方で、イングランド生まれのトラス外相は、ジョンソン首相の右腕として政権を支えてきた。日英包括的経済連携協定(EPA)を取りまとめた際に貿易相を務めており、またEU強硬派としても知られている。

首相候補者たちが減税競争を始めた

現状では、首相に就任した場合、直ちに300億ポンド(約4兆5000億円)規模の大型減税に着手すると公約に掲げたトラス外相に党員の支持が集まっている。

トラス外相は4月に実施されたばかりの国民保険料率の引き上げや今後実施予定の法人税の引き上げを撤回し、エネルギー料金に上乗せされるグリーン賦課金を一時停止するとしている。