「ロシアに勝てないのは裏切者がいるからだ」

番組はさらに、アメリカの政治サイト「POLITICO」を引用しながら、ゼレンスキー政権の内情を深掘りしていきます。すなわち、バカノウ氏が長官を務めてきたSBUの中にロシアの工作員がいることが、6月にウクライナ軍が敗北した原因だという指摘です。

ウクライナ当局者と西側外交官は皆、懸念はバカノフ氏だけでなく、ロシアの本格的なウクライナ侵攻の最初の数時間から数日間における当局幹部数人の決断についても大きいと語った。

へルソンのSBU長官であるセルヒィ・クリヴォルチコ将軍は、ゼレンスキーの命令に反して、ロシア軍が襲撃する前に同市から避難するよう部下に命じたと当局は主張する。

一方、彼の補佐役で地元事務所の反テロセンター長であるイホル・サドキン大佐は、クリミアから北上するロシア軍にウクライナの機雷の位置を密告し、敵機の飛行経路の調整に協力しながら、西へ向かうSBU捜査官の車列の中で逃走したと当局は主張している。

へルソンは、全面的な侵攻が始まって以来、ロシア軍に占領された最初の、そして今のところ唯一のウクライナの主要都市である。プーチン大統領が新たな攻勢を開始してから7日後の3月3日にロシア軍に占領された。

ウクライナ当局によると、ロシア軍がへルソンを簡単に占領できたのは、ドニプロ川に架かるアントノフスキー橋の爆破に現地SBU職員が失敗し、ロシア軍の進入を許してしまったためだという。

6月23日・POLITICO

ウクライナのドニプロ川にかかるアントノフスキー橋。
ウクライナのドニプロ川にかかるアントノフスキー橋。(写真=Uaquantum at Russian Wikipedia/PD-user/Wikimedia Commons
ゼレンスキー大統領に近いウクライナ政府高官は、6月にPOLITICOに対し、機密性の高い人事問題について話すため匿名を条件に、「我々は彼の仕事に満足しておらず、彼を排除するために動いている」と述べた。「我々は彼の管理能力に満足していない。なぜなら、今必要なのは……危機に対する管理能力であり、彼が持っているとは思えないからだ。」(7月17日・POLITICO

この番組の「ゼレンスキー大統領がスケープ・ゴートを必要としている」という見立ては、的確な評価と思います。ロシア軍は攻勢を強め、ウクライナ東部の約8割を制圧、南部でもじわじわと制圧地域を広げています。欧米から支援を受けるゼレンスキー大統領は、ロシアに勝てない理由を説明する必要に迫られているのです。