ざっと挙げただけでも、これだけの組織が存在し、相互に監視している状態だ。特に抜きん出て強大な権限や能力を持つ情報機関は存在しない。組織間の相互不信もあるので、仮にある機関が突出しそうなら、他の機関によって妨害されるだろう。この体制によって利するのはプーチンただ一人だ。組織間で互いに競争させ、抑止させることで、自らの身を守る体制を築いてきたとも言われる。

プーチンを唯一蹴落とすことができる存在とは

ではプーチン政権は盤石かといえば、決してそうでもない。

豊島晋作『ウクライナ戦争は世界をどう変えたか 「独裁者の論理」と試される「日本の論理」』(KADOKAWA)
豊島晋作『ウクライナ戦争は世界をどう変えたか 「独裁者の論理」と試される「日本の論理」』(KADOKAWA)

今のところほぼ唯一、プーチンを蹴落けおとすことができる集団があるとすれば、それはウクライナ軍だろう。彼らがどれだけ粘り強く抵抗し、どれだけロシア軍を損耗させるか。国際社会の制裁を長引かせ、どれだけロシアを軍事的にも経済的にも疲弊させることができるか。この一点にかかっているのではないだろうか。

ウクライナ軍の奮闘と西側による経済制裁が相まって、いよいよロシア国内にプロパガンダでは覆い隠せないほどの厭戦えんせんムードが漂い、市民が経済的に困窮すれば、さしものプーチンの地位も危うくなる可能性は出てくる。治安機関も「状況は変わった」と判断するかもしれない。もっとも、それには膨大な時間と犠牲が必要になるだろう。

「ロシア革命」の再来はあるのか

プーチンはしばしば「現代ロシアの皇帝」とも呼ばれる。ロシアの歴史を振り返れば、真の意味での最後の皇帝はロシア帝国のニコライ二世だった。

今から105年前の1917年、彼はロシア革命によってその座を追われ、やがて一家もろとも銃殺された。革命の原動力になったのは、折からの第1次世界大戦による国内の疲弊、そして無数の労働者による決起だった。なんとなく、昨今のロシアと似ている気がしないでもない。

ウクライナでのロシア軍の苦戦、ロシア経済の悪化など、今起こっていることはすべてプーチンの権力基盤の弱体化につながるものであり、決して強化するものではない。時間はかかるだろうが、やがて私たちは「歴史は繰り返す」の故事を目の当たりにすることになるのだろうか。

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