子どもが高校入学時に貯金1000万円

公立の進学校にも合格したが、受験なしで確実に大学に進みたいという息子の希望で、私立大学の付属高校を選んだ。学費が高いことで有名な学校だったが、真希さんは教育ローンを組むことなく、すべて現金で支払った。

学費以外に制服代、部活のユニフォーム代など20万円ほどかかる高校だ。両親が揃っていたとしても、なかなか厳しいのではないか。

「貯金は一応、子どもが高校に入学するときは1000万ぐらいありました。なので、学費の100万は払うことができたんです。この仕事をしてなかったら、どうなったのかなと思います」

貯金が1000万円と、サラリと真希さんは話す。度肝を抜かれること、二度目だ。インタビューのはじめ頃、真希さんが早口で「私は、貧困とはちょっと違って」と言ったのは、このことだったのだ。正規職でも、シングルマザーでこれだけの蓄えはなかなか持てないだろう。

「この仕事をしていなかったら、有名私大の付属高校なんか、到底、行かせられません。息子ものんきにサッカーなんか、やってる場合じゃないです。あのとき、この仕事をたまたま紹介されたから、今がある。そうでなければ、息子は施設に行っていたかも。私の手で育てることができたかすら、わからなかった」

息子のこれまで、現在、そして未来を考えれば雲泥の差だ。父親こそいないが、のびのびと成長を遂げ、好きなサッカーに打ち込み、成績優秀でエリートとしての道を歩んでいる。

当時、スーパーのレジ打ちすら断られた真希さんに、どんな選択肢があったのか。最終的には、生活保護か。いや、実父がいるということで、申請が通らない可能性もある。親子共倒れギリギリの苦しい日々しかなかっただろう。大学進学など、夢のまた夢だ。

取材時の真希さんは、「人妻系のデリヘル」で月に30万円ほど稼いでいた。週3から週4で、時間は10時から16時まで。

「今は不景気で、5人もあたることはないですね。店舗型ではないので、好きなところで過ごし、メールが入れば指定された場所に行きます。気前よく、金払いのいい人が、一番の理想のお客さまです。見た目とか、どうでもいいです」

この状態を、息子が大学を卒業するまではキープしたいというのが切実なところだ。

「息子には、『留年したら、その分の学費はないよ』って言っています。とにかく大学へ進んで卒業すれば、ほぼ、自分の好きな職業に就けるわけですから。息子は理系志望で、私立大の理系って学費が高いじゃないですか。お金の問題は、常にあります。なくなるのは、あっという間ですから。大学卒業まではとりあえず、お金が必要なので」