4.「国を守る志願兵」と「徴兵された若者たち」
そしてもう一つ、ロシア軍は軍事行動に欠かせないロジスティクスにも問題を抱えていた。兵士たちのための武器、弾薬、食糧も供給体制が十分に整っていなかった。また兵員輸送車や、戦車なども故障が相次いだ。
ロシア軍は侵攻前、比較的長い時間を国境地域での軍事演習で過ごしていた。兵士たちの疲労感もたまっていて、装備もメンテナンスの時期を迎えていたようだが、そのまま実戦に突入している。さらに作戦には想定外の時間がかかったため、不具合や燃料不足が相次いだと見られている。
戦争が始まった2月末から3月にかけてのウクライナは寒かった。氷点下まで冷え込む中、ロシア軍の兵士が戦車などの車両のエンジンを切って眠っているという話すらも報じられていた。開戦当初のウクライナ兵の平均年齢は30~35歳で、対峙するロシア兵は20~25歳の徴兵された若者が中心だったと推測されている。
「ロシア軍が得意なのは軍事パレードだけだ」
ウクライナ兵は多くが自ら戦うことを選んだ志願兵であり、士気は高い。一方でロシア兵は、多くが徴兵された若者であり、この侵攻の大義を十分に信じていたとは言い難く、積極的な意志で参加したわけでもない。それに陸軍の歩兵にはロシア国内でも貧しい少数民族の兵士も多いと言われる。
またウクライナ語はロシア語に近い言語であり、自分の親に顔が似ていたり年齢が近かったりする。その相手に銃を向けることには、最初は心理的な抵抗もあったかもしれない。かつ、装備や作戦、兵站にこれだけ不備があれば、兵士の士気が下がるのは当然だろう。
ロシア軍の初戦での敗退を見た西側の軍人からは、「ロシア軍が得意なのは軍事パレードだけだ」と揶揄する声も聞かれた。