職場の風土が人材をつくる

これまで見てきたように、富士ゼロックスは働く女性に配慮した人事制度が充実している。それが「働きやすさ」につながっていることは間違いないだろう。

今は2時間の勤務時間短縮を利用し、3時半すぎに退社する。

しかし、「働きやすさ」と「働きがい」はコインの表裏でもありながら、少し違うものだ。自己の成長や達成感を感じるときに、人は「働きがい」を得る。

営業職の伊藤は何回も「自分が成長している」と話したし、営業部長の鏡は「働きがいを感じるのは、部下が成長していく姿を見るとき」と語った。「成長」が「働きがい」のキーワードになっている。

そして「成長」は受け身では得られない。本人が「成長したい」と願うのはもちろんのこと、上司を含めた周囲が「成長をサポート」することの重要性を理解しなければならない。

つまり、「働きがい」は会社全体で日々つくり上げていくものなのだ。その意味では制度ではなく企業風土により多く依存している。いみじくも伊藤はこう話していた。

「周りにいる人たちの態度によって、自分は変わります。特に、女性の場合は、そう言えるんじゃないですか」

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(小倉和徳=撮影)