90年に会社に復帰すると、人事部で「女性の戦力化」のための制度整備に携わる。育児や介護などを含めた女性のライフステージをサポートしながら、仕事にも力を発揮してもらおうという狙いだ。

外資系企業を顧客とする営業部隊を統括する鏡久賀(右)。23人の部下一人ひとりと進捗状況について面談。留学、単身赴任の経験がいまの仕事につながっている。

この時期、家族介護休職制度、育児のための勤務時間短縮制度、家族介護のための勤務時間短縮制度などが矢継ぎ早に設けられた。

鏡はその後も、2008年に現在の営業部長に就くまで、人事畑を歩むことになる。この間、94年から親会社であるランクゼロックスに派遣され、1年半ほどロンドンに単身赴任し、「人事のマネジャーに付いての丁稚奉公」をしている。帰国後しばらくして育児休職を1年間取った。

今の鏡は、「育児に介護。営業だから当然数字は求められるし、部下の育成も」と八面六臂の活躍を求められている。

「朝5時には起きたいと思っているんですが……。まず家事をして、弁当を作り、夫と子供を送り出します。それから朝ごはんを食べて、新聞を読んで、家を出るのは8時くらい」

会社には夜の9時、10時までいることが多い。家事について夫と取り決めはないが、「ここらあたりまでは、お願いできるのでは」と様子を測りながら分担している。

「女性の出世頭なんですよね?」と尋ねると、鏡は「いえ、いえ、踏み台ですよ」と笑いながら、部下の待つミーティングルームへと足早に去っていった。