仕事との両立困難と介護離職

厚生労働省の2019年「国民生活基礎調査」によると、手助けや見守りを必要とする家族(※1)を同居して主に介護している男性は、124万5000人に上る。介護保険法による要支援・要介護と認定された家族を同居して主に介護している人の3人に1人(35.0%)が男性だ。さらに、このうち4人に1人(25.0%)が40歳代、50歳代の現役世代である。

また、介護時間が「ほとんど終日」の同居する主な介護者の男性も3割近く(27.3%)に上り、要介護者との続柄を見ると、夫が14.0%、息子が11.8%。息子が、息子の妻(7.3%)を上回っている。

ケアメンの前に立ちはだかる大きな壁が、仕事との両立だ。事例でも紹介した通り、責任感の強い人ほど、家族介護によって残業ができないだけでなく、通常業務も時間的制約を受けたり、心身ともに疲弊したりして、従来通りに職務を遂行できないことに負い目を感じて離職する場合が多い。

5年ごとに実施されている総務省の17年「就業構造基本調査」によると、過去1年間に家族の介護・看護のために前職を離職した男性は2万4000人で、40歳代、50歳代が41.7%を占める(女性は7万5100人)。

12年の調査と比べ、女性が6100人減少したのに対し、男性は4100人増加している。

過去5年間に離職した男性(12万5200人)のうち、17年10月の調査時点で職に就いている男性は4万2200人に対し、無職の人は8万3000人。66.3%が無職のままで、介護離職後の再就職の難しさを物語っている。

明治安田生活福祉研究所(現・明治安田総合研究所)とダイヤ高齢社会研究財団が14年に実施した調査「仕事と介護の両立と介護離職」(親の介護経験者で、介護開始時の働き方が正社員の男女40歳以上対象。回収数2268人)からは、再び職に就けても低待遇を余儀なくされる厳しい現実が浮き彫りとなっている。

介護離職後に再就職した男性(介護離職男性の約半数)のうち、正社員に転職できたのは3人に1人(34.5%)に過ぎず、転職後の平均年収は約4割ダウンしていた。

(※1)「手助けや見守りを要する者」(調査の用語)には、介護保険法による要介護・要支援の認定を受けている人のほか、障害や身体機能の低下などで歩行・移動、着替え、洗面、排せつ、入浴等に際して何らかの手助けや見守りを必要とする人や、意思疎通が困難な人も含む。推計値ながら実数でデータ化されているため、最も実態に近い数値として使用した。