札幌のブランド化が加速するか
北海道新幹線の札幌延伸や札幌冬季オリンピック誘致を背景に、①官民による中心地の再開発、②外資系高級ホテルの誘致、③周辺市町への波及、という3つの特徴をもった札幌は、いま日本で最も元気な都市となっているのだ。
北海道の中核都市であり、交通が便利で、自然や食が豊か、住宅など生活コストも東京など「三大都市圏」と比べれば安く、地元の人々だけでなく、転勤者や観光客の満足度も高い街だ。
一方で、札幌には、大きな基幹産業があるわけでもなく、大企業の支店や官公庁の出先機関が拠点を構える典型的な支店経済でもある。このため暮らしやすい街であり、元気な街ではあるが、消費の街であり、例えば、国内外の富裕層を惹きつけるような投資の街、ブランドの街ではないともいわれてきた。
しかし、マリオットとハイアットという外資系最高級ホテルの進出も決まった。こうしたグローバルブランドの進出は、札幌のブランド価値をもう一段高めることになる。
外資系最高級ホテルがある都市は、この先も魅力を放ち生き残る可能性が高い。なぜなら、こうしたホテルは、自社投資かフランチャイズ契約かにかかわらず、しがらみや先入観なく、単純にビジネスとして採算がとれるのか、成長性はあるのか、自社ブランドに貢献するのか、といった合理的な観点から立地や投資が選ばれているからだ。
外資系ラグジュアリーブランドホテルの開業が、コロナ禍でも、継続していることを一つの判断材料として、特に、海外の富裕層や投資家は、安心して、中長期的視点で事業開発や不動産投資を行うことができるのだ。
もちろん、外資系最高級ホテルの存在は、インバウンドや国際会議などの誘致や、札幌冬季オリンピック誘致にもプラスに働くことになる。
札幌では、官民による再開発や外資系最高級ホテルにより都市が再生されブランド力が高まることで、資産価値の上昇により、さらなる開発や投資が行われる、という、投資が投資を呼ぶ好循環が生まれてきているのだ。特に、市中心部や高級住宅地などは、オフィスビルや高級マンションの供給量が限定され、希少価値も増すことでさらなる地価上昇も期待できよう。
ニセコと札幌が同一経済圏となる
なお、北海道新幹線の札幌延伸により、在来線を利用して最短でも約2時間かかる札幌―倶知安(ニセコ)間の所要時間は25分に縮まる見込みだ。東京―新横浜間の東海道新幹線の所要時間17分と大差ない感覚だ。北海道新幹線の札幌延伸で、道内最大都市の札幌と世界的なスキーリゾートのニセコが、同一経済圏になるといっていいだろう。
例えば、東京から札幌まで北海道新幹線で移動し、最初の数日は札幌の外資系高級ホテルに宿泊し、札幌国際スキー場などでスキーを楽しみながら、ススキノで北海道の幸を楽しみ、札幌市内観光にショッピング。後半は、新幹線で25分のニセコに移動、「パークハイアットニセコHANAZONO」に宿泊し、スキーと温泉三昧で、帰りも新幹線で札幌に戻り、帰路は新千歳空港からといった滞在が可能になるわけだ。世界的なスキーリゾートであり外資系最高級ホテルもあるニセコと札幌は競合関係となる面もあるが、連携も可能な関係を構築することもできよう。
海外スキーリゾート都市でいうと、ニセコと札幌は、カナダにおけるウィスラーとバンクーバー、米国におけるベイルとデンバーといった関係であろうか。
新幹線と五輪を控え、外資系最高級ホテルの進出も決まった札幌。北の地方都市としての歴史はあったものの、街としての存在感や輝きに欠いた面があったのは否めない。だが、ニセコとも一体化することで、この先、海外の富裕層や投資家も参戦し、投資が投資を呼ぶ世界が続くのは必至で、東京や大阪にもひけをとらないようなキラキラとした街の魅力が何倍にも増していきそうだ。