また、原子炉を収める圧力容器を製造する日立、IHIなどのメーカーも含め1社にまとめて技術者を確保する。

全国での電力融通を一刻も早く実現せよ

3つ目は全国の高圧送電網も1つにまとめて、日本高圧送電会社を設立することだ。発電に余裕がある地域から、電力不足の地域へ全国規模で送電するしくみだ。

技術としては、日立製作所がスイスのABBグループから約1兆円かけて買収した高圧直流送電(HVDC)がある。日本は、商用電源周波数が糸魚川静岡構造線を境界として二分されていて、東日本と西日本との電力の融通が困難な状況だ。しかし、ABBの技術によって長距離送電が可能となり、日本全国を一気通貫できる高圧送電網が構築できる。

高圧送電会社のもう1つのメリットは、国内の電力需要にある“時差”を活用できることだ。北海道から九州までは約1時間半の“時差”がある。電力需要のピークは、北海道から九州へ徐々に移動していくから、ピークの地域に電力を送るようにする。

太陽光発電の活用も変化する。夏の北海道は午前4時前から明るいから発電がスタートできる。北海道で日が沈んだあと1時間半は九州で発電した電気を送る。私が学生時代に計算したところでは、太陽光をうまく使うことで総電力使用量は15%ほど削減できる。

ただし、風力や太陽光発電など再生可能エネルギーの一部は、高圧にできないから遠くへは送電できない。各地域は、全国的に融通しあう電力とローカルの電力を合わせて使うことになる。

なお、風力、太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギーも、海外に比べると実態は驚くほど後れている。例えば地熱発電は、熱源とタービン技術で日本は世界トップクラスなのに、規制や温泉組合などの反対でほとんど進んでいない。

私は電力需給対策について、3.11のときから大規模な節電策も含めて提言をつづけてきた。今も私は電力使用率が95%を超えたらスマホで緊急警報を鳴らして節電措置を講じるべきだと提案しているが、政府から具体策は聞こえてこない。エネルギー問題を担当する電力会社と政府・経産省は今も怠慢であり、罪は重い。

(構成=伊田欣司)
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