20年度は天然ガスが39%、石炭が31%、石油等が6.4%と計76.4%だ。残りは再生可能エネルギーで、水力が7.8%、太陽光が7.9%、バイオマスが2.9%などで合計19.8%だ。

政府は2050年にカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)を達成するため、30年度には温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減するなどの目標を掲げている。そこでは30年度の電源構成は、再生可能エネルギーが36~38%程度、原子力が20~22%程度、水素・アンモニアが1%程度として非化石燃料の合計が59%程度になる。原子力は、現状の約4%から20%以上に増やす計画となっている。だが、現実はそれから大きくずれて3.11の前よりも圧倒的に炭酸ガスを排出する惨状になっている。カーボンニュートラルの目標は、絵に描いた餅で終わる可能性が高い。

電力会社改革に必要な3つのプラン

東日本大震災の直後、私は元原子炉設計者として福島第一原発の事故を徹底的に検証し、細野豪志原子力行政担当大臣(当時)に280ページの報告書を提出した。その後、東電も政府も何もやらなかったので、翌12年に『原発再稼働 最後の条件』(小学館)という本で「やるなら真面目に取り組め」と最後通牒を突き付けた。

当時、大阪市長だった橋下徹氏が大飯原発の再稼働に反対していたから、電話で「大阪がブラックアウトするかもしれない」と2時間ほど説得したころだ。いくつかの電力会社から「うちの原子炉も監査してほしい」と頼まれたこともあった。

原発事故の分析、各地の電力会社を調べた経験も踏まえて、3つの改革案を提言してきた。①各電力会社から原発部門を切り離して国内で1社に統合する、②原発関連のメーカーも1社に統合する、③全国的な高圧伝送網の会社を設立する、という3つだ。

日本には北海道から沖縄まで10の大手電力会社があり、沖縄を除く9社は原発を持っている。これまでは9電力がそれぞれ原発を運営し、管轄する地域内に電力を供給してきた。原子力に対する住民のアレルギーをなくすには、地域の電力会社が「原発は安全ですよ」と地域密着で説明するほうが、浸透しやすいと信じられていたからだ。

しかし、原発事故が起こってからはマイナス面しかない。原子力分野の優秀な人材を各社が抱えるのは、もはや困難な状況だからだ。

事故後、原子炉を監査した電力会社のなかには、私の質問に答えられる専門家がいないところが複数あって驚いた。「福島の事故を徹底的に分析し、自社で同じ事故は絶対に起こさない」といった発想はなく、福島の事故は他人事である印象を受けた。