KDDIだけでなく、マスコミの告知も不十分だった
そのために重要なのは「告知」なのではないだろうか。今回、KDDIの障害状況がよく分からない、という人々が少なくなかった。KDDIのアナウンスが分かりにくかった、という問題もあっただろう。だが筆者は、障害状況や回避方法が、もっと広い手段で素早く伝えられていれば、問題はここまで大きくならなかったのではないか、と考えている。
テレビはニュース番組の中で「障害が起きている」ことは伝えたが、「どうすれば回避できるか」「今の障害状況はどうか」を詳細に伝えていない。地震や台風といった災害時のようにニュース速報やL字表示を出して障害の状況を伝えていれば、混乱を少しでもおさえられたのではないか。また、他社の携帯電話の利用者には、緊急通報メールでKDDIの状況が伝えられても良かったはずだ。
回避策として、災害時に使われるWi-Fiネットワークである「00000JAPAN」が公開されていれば、それを使って連絡できた人もいるだろう。近くの公衆電話の位置が分かっていれば、緊急通報の面で安心できた人もいたはずだ。
これは「一企業のトラブル」ではない
これらのことができていないのは、携帯電話回線の大規模障害が「災害と扱われていない」からである。おおげさだと思われるかもしれないが、携帯電話というインフラが使えなくなることは、災害に準ずる影響を与えうる。
だとすれば、災害で使われている連絡・情報伝達手段のうち、いくつかを使って顧客と周囲に状況を伝える形が検討されてしかるべきだ。「緊急通報をローミングする」という話も、ここに紐づくと考えている。
一企業のトラブル、と考えるのは、もはや難しい。通信や電力など、社会インフラのトラブルを「準災害」として対応し、適切かつ効率的なアナウンスと対処をするワークフローの構築が求められる。そのためには、政治・行政が明確なグランドデザインを作り、民間と一体になって対処することが必須だ。