一方で、もっとシンプルな方法を提唱する人々もいる。

海外では、携帯電話からも、緊急通報だけは「通信契約なし」で、どの事業者からもかけられる国がある。今回、KDDIの大規模障害で緊急通報がかけられなかったのは、日本では「緊急通報時にも、携帯電話の契約者が誰かを確認する」仕組みになっているからだ。この制度を見直してはどうかという話が出てきている。

これも検討に値するものだと思うが、なかなか実現は難しい。緊急通報は「誰がどこからかけたのか」が重要な場合が多い。警察・消防としては、通話番号を把握した上で対応したいのが本音であり、それは「防犯」の意味でも重要なことだ。また、契約なしでかけられるようにした場合、緊急通報にかかった通話コストは誰がどのように負担するのか、という課題も出てくる。

公共の地下鉄で携帯電話を使用する若者
写真=iStock.com/NanoStockk
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障害に備えて別回線を契約する方法もあるが…

これらの問題は簡単には解決しない。そのため、「携帯電話回線を複数用意しよう」という動きもある。より現実的な解決策かと思う。携帯電話の利用料は低くなってきているから、「普段使わない回線として、メインの事業者とは別のところを契約する」という発想はアリだ。

だが、である。それを国民全員がするべきなのだろうか? 結局費用がかかることに変わりはないし、数年に一度のトラブルに備えて費用負担できる人ばかりでもない。企業内で「止まってはいけないサービス」に従事する人々や、個人として費用負担に耐えられる人はいいが、全員に強いるものでもない。

そもそも、通信は「携帯電話」でしかできないわけではない。インターネットを介していればいいわけで、Wi-Fi経由でLINEなどを使い、メッセージや通話の形で連絡してもいい。「1つの携帯電話回線しか連絡方法がない」ことが問題なのだから、家庭の固定回線や公衆インターネットなど、対応方法は色々ある。